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革新的衛星技術実証4号機 実証テーマ
ARICA-2による民間衛星通信を利用した突発天体速報システムの実証実験
青山学院大学
理工学部 物理科学科 教授 坂本 貴紀
いつどこで起こるかわからないガンマ線バーストなどの突発天体の観測には、発生を遅延なく速報するシステムが不可欠。青山学院大学のキューブサット「ARICA-2」は民間の衛星通信を利用し、突発天体の速報システムの実証実験を行う。更に、この通信システムを衛星の運用にも使用する。「ARICA-2」を開発している青山学院大学の坂本貴紀教授にお話を伺った。
- 革新的衛星技術実証2号機のテーマ名「1Uキューブサットによる機上突発天体速報システムの実証実験」で「ARICA」を打上げ、今回はその2号機とのことですが、意気込みをお聞かせください。
坂本 2021年11月9日に革新2号機として打ち上げていただいた「ARICA」初号機は、残念ながら衛星からのデータ受信が一度もできませんでした。そのため、今回の2号機となる「ARICA-2」は初号機の目的はそのままに、確実に衛星からのデータが受信できるように様々な部分においてグレードアップを行いました。まずは、なんとしても、ARICA-2からの産声を聞きたいと思っています。そして、産声を聞くことができたら、民間衛星通信の利用による、新たな突発天体の速報システムが実証できたらと考えています。
- 「ARICA」と「ARICA-2」の違いを教えてください。
坂本 まずは、大きな違いはその大きさです。「ARICA」は 1Uサイズ でしたが、「ARICA-2」は 2U サイズのキューブサットです。「ARICA」の時の反省点として、発電できる電力が不足気味だったという事がありましたので、「ARICA-2」では、太陽電池パネルを貼る面積を少しでも大きくするために、2U サイズとしました。また、民間衛星通信機のみであった「ARICA」では、通信機のトラブルがあった場合に、衛星のどの部分でトラブルが発生しているか分からないという反省のもと、民間衛星通信機に加えて、UHF帯で通信できるアマチュア無線機も搭載する事で通信の冗長を行いました。世界中のアマチュア無線家の方々に「ARICA-2」との通信を楽しんでいただけるようなアマチュアミッションも用意しました。次に、革新的衛星技術実証2号機の RAISE-2 で宇宙実証されたソニーセミコンダクターソリューションズのボードコンピュータ SPRESENSE を衛星のコンピュータとして採用しました。宇宙実績があり、低消費電力、さらにマルチコアを備え、Arduino 言語で開発のできる SPRESENSE は、開発の敷居を下げ、かつ、開発をスムーズに進める上で大きなメリットがありました。さらに、ARICA-2では、磁気トルカを用いた姿勢制御系も搭載しています。「ARICA-2」の実証目的は「ARICA」と同じですが、様々な所でミッションを成功へ導くためのアップグレードをしています。
- 開発メンバーの入れ替わりなどもあったかと思いますが、開発において苦労した点、克服するための工夫などがありましたら教えてください。
坂本 幸いな事に、「ARICA」の開発を終えたタイミングで、「ARICA-2」を始動できたため、研究室での衛星開発が途切れることなく進められた事は大変なメリットでした。大学という環境では、メンバーの入れ替えは避けられない事ですが、実際に開発する衛星が常にある状況を作れた事は、衛星開発の技術伝承という事が人から人へと直接伝わり、「ARICA-2」の開発がスムーズにスタートできたと思います。一方で、「ARICA-2」で新しく搭載したアマチュア無線機、アンテナ展開機構、地上局の設置、そして、姿勢制御系においては、今まで経験がなかったため、色々と苦労しましたが、革新的衛星技術実証4号機の他のキューブサット開発の方々にいろいろとご協力いただきながら、なんとか進める事ができました。
- 今回の実証により、どのような未来を想像していらっしゃいますか。実証後の展望についてお聞かせください。
坂本 民間の衛星通信を用いた突発天体の速報システムを実証できた暁には、キューブサットを用いた本格的な観測衛星の開発に取り組みたいと思っています。次は、天体からの重力波源のX線対応天体を探査する科学ミッションができないか考えています。この実現には、地上の重力波観測装置による重力波イベントの検出を受けたら、即座にその情報を衛星に伝え、衛星に搭載されたX線観測装置による観測を開始する必要があります。その通信にも民間の衛星通信を使いたいと考えています。「ARICA-2」での実証を踏まえ、この科学衛星開発へ結びつけたいと考えています。
一方で「ARICA-2」で実証する民間の衛星通信の衛星での利用は、衛星のデータをいつでもリアルタイムで地上にて受信でき、また、衛星へもいつでもデータを地上から送信できるため、衛星の健康状態を監視し、何か異常が見つかった時は即座に衛星へデータを送信し、対処するという運用が可能となります。衛星で利用できる通信システムとして、民間衛星通信を「ARICA-2」にてしっかりと実証し、その有用性を検証したいと考えています。


