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プロジェクト等SOI-SOC MPU開発

情報通信技術の進展は、ネットワークでの「モノ」と「モノ」との自律的情報のやりとりを可能にし、世界はいっそう繋がりつつあります。今後このネットワークは宇宙にまで広がると考えられています。ネットワークの中心にあって情報の制御を担う核となる半導体部品がMPU(Micro Processing Unit)で、次世代の宇宙機には、これまで以上に高機能・高性能な宇宙用のMPUが求められています。また、宇宙用のMPUは民生用と異なり、宇宙の厳しい放射線環境に耐えねばなりません。

本開発では、耐放射線性に優れるSOI(Silicon on Insulator)半導体製造技術と、複数の機能を1つのチップに搭載するSOC(System on Chip)設計技術を核にして、多様化・高度化する宇宙ミッションに貢献する高機能・高性能なMPUを開発します。

研究の意義価値

革新的宇宙ミッションの実現に貢献します。

近年の宇宙ミッションは従来の人工衛星利用に加え、太陽系探査・衛星コンステレーションなど大型から小型に至る多様化・高度化が進んでおり、宇宙用のMPUには、必要な機能・性能をスケーラブルに選択できる拡張性や、低消費電力性、現状より10倍以上の高い処理能力などが必要となります。このような要求を満たす世界トップレベルのMPUを開発することで、将来の全ての宇宙機の革新的ミッションの実現に貢献します。

日本の宇宙産業の競争力を高めます。

これから増大する小型宇宙機を含め、日本の宇宙機の自立性・自在性の観点から、世界トップレベルのMPUを国産・低コストで安定供給する必要があります。これは宇宙コミュニティに閉じていては実現が困難であるため、最先端の民生技術を利用し、世界の宇宙開発の動向と宇宙ユーザの要求を見極めつつ民生分野への展開を視野に入れて開発します。これにより、日本の宇宙産業の競争力を高めるだけでなく、その成果が社会に広く利用されることを目指します。

研究の目標

高機能・高性能・低消費電力性能のMPUを開発します。

民生の先端SOI技術とSOC技術を利用して、これまでの宇宙用MPU開発で培ったJAXAの耐放射線性強化技術を活かすことで、耐放射線性と性能をバランスさせた小型・低消費電力の純国産MPUを開発します。
また、その入出力機能においては、世界的標準となりつつあるスペースワイヤを含む多彩な機能を実装することにより、ネットワーク機能を向上させた拡張性の高いMPUを開発します。

2017年度までに耐放射線化を施した要素回路の試作と放射線照射試験を行い、耐放射線性の目途を得るとともに、コア処理性能についてシミュレーションを行い、現状より10倍以上の性能実現性の見込みがあることを確認しました。これらの結果に基づき、要素回路を組み合わせたチップ設計を進め、2019年度末に試作品(エンジニアリングモデル:EM(Engineering Model))の製造を完了させました。2020年度以降、電気性能及び機能の品質評価と耐宇宙環境性能の信頼性評価を行い、製品化に向けて確実に開発を進めます。

試作品(組み立て前チップ)
試作品(チップをパッケージに組み立てた状態(蓋取り付け前))
試作品の試験ボード搭載状態
試作品(組み立て・蓋取り付け後 前面)
試作品(組み立て・蓋取り付け後 後面)
高機能・高性能なMPU開発

MPUの低コスト化や品質・供給の安定化を実現させます。

地上に降り注ぐ宇宙中性子による民生品のソフトエラーも問題になっており、開発する耐放射線技術を民生の高信頼性部品分野へ展開します。
民生技術を利用して、民生品と並行した開発を進めることで、低コスト化や品質・供給の安定化の実現を目指します。

低コスト化や品質・供給の安定化