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革新的衛星技術実証4号機 実証テーマ
再チャレンジ -超高精度姿勢制御による指向性アンテナを搭載した海洋観測データ収集衛星の技術実証・持続可能な宇宙工学技術者育成とネットワーク型衛星開発スキームの実証
米子工業高等専門学校
総合工学科(情報システム部門) 准教授 徳光 政弘
複数の高等専門学校が連携して海洋観測データを宇宙から収集する革新的な技術に挑戦。KOSEN-2Rは、指向性アンテナと超高精度姿勢制御を駆使し、洋上ブイから送信される微弱な電波を受信する実証実験を行うことでIoTの新たな可能性を切り拓くとともに、衛星開発を通じた人材育成を目指す。米子工業高等専門学校の徳光政弘准教授にお話を伺った。
- イプシロンロケット6号機打上げ失敗による宇宙実証の機会喪失を受け、今回、革新的衛星技術実証4号機の実証テーマとして再チャレンジに臨まれます。どのような思いで再チャレンジを決断されましたか。
併せて、再チャレンジするにあたって変更したことがあれば教えてください。
徳光 再チャレンジの機会をいただけることになったときに、私はKOSEN-2衛星開発プロジェクトを構成するメンバーの一人として、KOSEN-2衛星の再開発は乗りかかった船と思い、気持ち新たに再度宇宙実証へ向けてやっていくぞ、と思いました。
一方で、KOSEN-2衛星開発プロジェクトは国立高専の学生・教員が主要な構成メンバーになっています。プロジェクトメンバーの教員側は大きな入れ替わりがないものの、開発に参加していた学生はやがて卒業し、就職や進学で次の進路先へ巣立っていきます。そのため、再チャレンジへ向けて意気込み新たに取り組んだ参加学生は衛星開発の途中で高専を卒業し、再チャレンジの開発は後輩に託した学生が多くいました。残っている学生も上級生になりましたが、後輩学生への指導や、卒業後に母校を訪れて現役学生と交流などを通じて、開発当時の参加学生の思いは、脈々と現役学生に受け継がれていると思います。
また、再チャレンジは宇宙実証するミッション自体に変更はありません。しかしながら、前号機であるKOSEN-2衛星の開発を振り返り、ミッション達成のために、衛星に搭載する主要部品の設計の変更、開発の進め方など改善してきた部分は多岐にわたりました。
- 開発メンバーの入れ替わりなどもあったかと思いますが、開発において苦労した点、克服するための工夫などがありましたら教えてください。
徳光 開発メンバーが入れ替わり、開発において苦労した部分もありますが、上級学年の開発メンバーの尽力と主導的な後輩学生の育成により、衛星の完成にこぎつけることができました。
プロジェクト全体として、常に開発メンバーの入れ替わりに対する技術伝承は課題意識を持っています。前号機KOSEN-2の開発から再チャレンジの開始まで空白期間がなく開発が始まっており、開発に参加していた学生が次世代の学生へ引き継ぐことができたと思います。しかしながら、国立高専を中心とした衛星開発プロジェクトにおいても、開発メンバーは学生ということもあり、やがては就職・進学によってプロジェクトから離れていきます。高専の場合は本科での5年間の教育を基本としており、開発に参加する学年によっては短くて1年、長くて3年くらいの期間の参加になります。多くの学生が、自分が担当していること、あるいは全体的な工程について一通りのことがわかってきたところで卒業していきます。そのため、技術やプロジェクトの進め方などの継承については、常によりよい方法を考え・試行の連続です。
今回の開発では、技術や経験の継承について、本科卒業後さらに2年間就学できる高専・専攻科所属の専攻科生が、重要な役割を果たしてきたと考えています。学齢的には大学3〜4年生に相当する学生になりますが、部品製作、衛星の組み立て、ソフトウェア開発、プロジェクト進行など、それぞれの局面で主導的な役割を担い、開発に携わっていました。高専ごとに開発を分担していますが、各高専で専攻科生が開発をリードし、後輩学生を指導する形で進めました。
開発の中では、必要な搭載部品の開発について技術的に難しい課題にぶつかることもありました。例えば、KOSEN-2Rは、衛星本体から突き出ている小型の八木アンテナが特徴の衛星です。この八木アンテナは、今回の実証において、洋上の観測地点から送信されたデータを受信するために重要な部品になっています。キューブサットへの八木アンテナの収納・展開の実現は、課題の考察・改良・実験の繰り返しでした。開発上の課題に対して、先輩・後輩の学生同士が知恵を絞り、その課題を乗り越えていきました。
さらに、前号機KOSEN-2の開発から3年の月日が流れていますが、KOSEN-2からKOSEN-2Rのソフトウェア開発関係で継続的に参加している現役の学生が1名いました。KOSEN-2参加時は高専・本科3年生、今は高専・専攻科2年生で、まさにプロジェクトの生き字引としてその貴重な経験を活かして試験や開発を牽引していました。
衛星開発プロジェクトとしては、高専・専攻科生がプロジェクトを先導して、開発を乗り切りました。
- 今回の実証により、どのような未来を想像していらっしゃいますか。実証後の展望についてお聞かせください。
徳光 我々は、地震研究に重要な海底地殻変動観測データ収集の課題に対して、キューブサットを用いて高信頼・安価な観測データ収集システムを実証することを目的にプロジェクトの活動を進めてきました。海底地殻変動観測は、陸と観測場所で直接無線通信によりデータ伝送ができない、陸地から遠く離れた地点で行います。海底地殻変動観測は、陸地から遠く離れた地点で観測が行われており、観測データ収集のリアルタイム性、実際にデータ収集をするシステム全体の整備など課題があり、継続的に検討がなされています。
今回の実証は、観測データ収集の部分に焦点を当てています。実証により、キューブサットを用いた方法が、海底地殻変動観測データ収集のひとつの方法として、さらなる研究開発や社会実装への発展につながることに期待しています。近い将来では、複数のキューブサットなどの超小型人工衛星を用いた海底地殻変動観測データの収集システムが整備され、地震・地球科学の研究に必要となる観測データが随時分析と活用ができるようになっているとよいと思います。また、今回の実証が、他の海洋研究や漁業などの分野における観測データ収集技術としても発展的に応用され、より幅広い利用につながっていくことを期待しています。
最後に今回の実証は、テーマとして持続的な宇宙工学人材育成が含まれています。KOSEN-2およびKOSEN-2Rの開発に参加した学生は各自の進路として様々な分野へ進学・就職していきましたが、宇宙産業分野の企業へ就職した学生や、さらに興味を深めるために宇宙工学関係の大学院へ進学した学生もいます。近い未来に、この衛星開発プロジェクトを経験した学生が、社会に出てさまざまな分野で活躍していることを期待します。


