研究の意義価値
EDL&R技術はJAXAのコアコンピタンスの一つであり、その高い国際競争力を維持・発展するべきと考えています。しかしJAXAにおける大気突入ミッションの頻度は高いとは言えず、着実な技術の継承と発展が難しい一方、近年はシステム要求が複雑かつ多様化し、解決すべき課題も増大しています。本研究と、これを実施する横断的な体制は、JAXAがこれまで培ってきたEDL&R技術の知見を着実に継承・発展させ、現在開発中のプロジェクトを技術面で支え、また新しい価値を創造するEDL&Rミッションを創成すると期待されます。
研究の目標
本研究は、図1に示すとおり、5分野15課題から構成される共通基盤技術の高度化のための研究と、主として3つの宇宙探査ミッションに関わる将来EDLシステムの検討から構成されています。各研究課題の目標は、それぞれ以下の通りです。
EDL&R共通基盤技術の高度化
宇宙基本計画、国際宇宙探査ロードマップ、および宇宙科学探査ロードマップ等を踏まえ、現在および将来のEDL&Rミッションを支え、また新しい価値を創造する宇宙ミッションを創生するために必要な5分野15課題のEDL&R共通基盤技術(図1の上段)を重点的に発展させ、個々の技術課題が掲げる目標を達成します。
図2は、これまでの活動の一例で、各分野で実施してきた試験等の様子です。
- 次世代アブレータ材料のアーク風洞での加熱試験の様子
- 再突入カプセル空中捕獲技術用のパラフォイルの投下試験の様子
- 新型カプセルの空力安定性を評価するためのゴム気球から投下試験(ゴム気球放球時の様子)
- 豪州で実施した大気球による大型カプセルの自由飛行&パラシュート展開試験用のSRC実験機
- 観測ロケット実験の大気圏突入&回収実証機(RATS-L)の海上回収の様子
先進的SRCシステムの研究
先進的サンプルリターンカプセル(SRC)技術を獲得するために、米国との共同提案の彗星サンプルリターン計画であるCAESARのSRC(図3上)をリファレンスモデルとして、その要求を満たすシステム設計を行い、全機 BBM を開発して成立性を実証します。CAESAR SRCは、現時点で想定しうるSRCの究極形です。先行検討(概念設計)で抽出されたクリティカル技術課題に集中的に取り組み、その結果をシステム設計にフィードバックします。ここで獲得した技術は、国内で検討されている次世代の深宇宙サンプルリターン計画用の先進的なSRC(図3下)へ適用されます。
(上:CAESAR用の大型SRC、下:次世代小天体SR計画用の高速再突入SRC)
高頻度で継続的なフライト実証機の検討
HTV搭載小型回収カプセル(HSRC)で培った再突入・回収カプセルのシステム設計技術を継承・発展させ、国際宇宙ステーションを含む地球低軌道の利用拡大に資する、高頻度で継続的なサンプル回収システムの構築を狙います。高頻度サンプル回収カプセルとして図4に示す2種類の形態を候補として検討しており、「拠点からの高頻度サンプル回収カプセル」については、低軌道からの高頻度サンプルリターンの事業展開を計画している民間企業とともにコンセプト共創を実施することで早期実現を目指しています。
(上:自己完結型カプセル、下:拠点を活用した高頻度回収カプセル)
将来火星探査アーキテクチャの検討
宇宙基本計画工程表に記載された重力天体離着陸技術の獲得の一環として、国際宇宙探査ロードマップと先導研究・宇宙探査技術の研究戦略を踏まえ、MMX 後の戦略的火星探査(JSMEP)の実現のためのアーキテクチャの検討と主要技術の研究を推進します。火星着陸に必要なEDL技術獲得するための段階的な実証計画を立案し、それに沿った、火星着陸実証機(図5)のアーキテクチャのトレードオフや概念検討を行い、クリティカルな技術の実証とシステム検討を行います。
(上:展開型エアロシェルを適用した超小型火星着陸機、下:逆噴射・軟着陸システム技術の実証機)

