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支える研究 宇宙活動拡大のための機構マテリアル基盤技術の高度化 バッテリのユーザビリティ向上に関する基盤技術研究

宇宙機のエネルギー供給源として、充放電可能な蓄電池(バッテリ)は必要不可欠なデバイスです。また、バッテリは充放電と経年により劣化する為、宇宙機の寿命を左右するデバイスでもあります。そのため、従来はバッテリの寿命性能を維持することを目的に、使用温度範囲、放電深度等の制約の中で運用してきました。今後ますます多様化する宇宙活動において、このバッテリの制約は衛星設計の自由度向上の足枷にもなるため、バッテリのユーザビリティ向上が課題であると認識しています。

これまでのバッテリの状態、ユーザのニーズ及びそれを踏まえた今後のバッテリに期待されるソリューションを図1にまとめました。
この中で本研究においては、

  • 極限環境対応(運用反映)
  • 運用条件の緩和(設計反映)
  • 状態検知に基づく寿命予測

を取り上げ、宇宙機設計の自由度向上に資することを目標に、それぞれの課題解決に取り組んでまいります。
(軽量化については、別の研究テーマで取り組んでいます。)

図1 宇宙機用バッテリに対する現状・将来ニーズ・ソリューション

研究課題

本研究において取り組む課題の例を以下に示します。

バッテリの使用温度範囲の拡大

宇宙機の中でバッテリは設定温度±3℃以内で温度管理されています。この温度管理が宇宙機の熱設計への負担となっており、特に探査活動等においては、放熱面の確保と保温の両立という相反する事象への対応を求めることになってしまいます。本研究では、衛星用途では温度範囲を従来宇宙機用バッテリよりも10℃拡大、探査用途では使用温度範囲を-20℃以下から+40℃以上に広げることを目的に研究開発を進めます。

バッテリの放電量の緩和

低軌道衛星においては、数万回という充放電サイクルに耐え、7年以上、最近では12年近い運用が求められています。そのためバッテリの放電深度(DOD)を、25%を上限として寿命確保できる運用条件としていました。この運用制約により要求されるエネルギーに対して搭載バッテリ量が多くなる課題が生じています。そのため、本研究ではDODを40%以上に緩和するとともに、出力性能を向上させることでバッテリ搭載量を極力抑える研究に取り組んでいます。

寿命予測技術の高度化

打ち上げ後は修理・交換が難しい宇宙機においては、劣化要素を有するバッテリの寿命推定技術の向上が求められています。特に最近では衛星の後期利用、二次利用の機会が高まってきているため、寿命末期の予測精度向上が課題となっています。上記のバッテリの研究成果などを活用し、寿命後期の予測精度向上を図るとともに、これまで地上試験から予測していたバッテリの状態を、運用中のバッテリから直接情報を収集し、より正確な予測を可能にする技術の研究にも取り組んでいます。

長寿命化研究で取り組んできた研究成果や上記取り組みを踏まえ、本研究期間において技術成熟度TRL5を実現し、宇宙機設計に適用可能な技術を獲得していきます。(図2参照)

図2 バッテリのユーザビリティ向上に向けた研究の取り組み