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支える研究 宇宙活動拡大のための機構マテリアル基盤技術の高度化 宇宙機のライフサイクルにおける
環境変化に適応するスマート安定構造

宇宙空間で人工衛星の構造に生じた極僅かな変形や振動のため、想定していたミッションが達成できない場合があります。

この変形や振動によってミッション機器の向きや位置が極僅かに変化するだけですが、地形や天体等の撮影においては画像に歪みやボケが発生し、光による通信においては目標の位置に光が届かないため通信ができなくなることがあります。また、光の干渉を利用した大気の観測においては存在しないガスの成分を誤って検出し、エネルギーの観測においては振動のエネルギーが熱エネルギーに変換されることで熱雑音となって観測ノイズとなることもあります。

この変形には、太陽などからの熱入力による熱変形、CFRP等の複合材料で作った構造部材が組立中に吸った水分(湿気)が宇宙空間で排出されて収縮する脱湿変形があり、これらは非常に緩やかな時間変化です。対して、振動は早い時間変化であり、人工衛星の内部搭載機器が稼働することで発生する微小な振動は擾乱と呼ばれます。

このような変形や振動がミッションへ与える影響がある一方で、観測精度や通信能力を高めることと併せて長期の運用が望まれています。運用が長期になると経年変化によって人工衛星の構造に使用している材料の物性や内部搭載機器の擾乱の特性が変わるため人工衛星自身の状態が日々変わっていきます。従来は変形や振動をできるだけ生じないような設計思想の下でこれらを抑え込んできていましたが、このような長期的な構造の変化の予測は容易ではなく従来の設計思想の限界が見えてきました。

このような課題を解決すべく我々が研究を行っているのが、スマート安定構造と呼ばれる新規の設計思想です。この特徴は、人工衛星の状態を自身が把握して変形や振動を補正することにあります。これを実現するために必要となる予測、検知、補正の3つの技術について、静(微小変形)と動(擾乱)のそれぞれの課題において研究を行っています。

研究の内容

低熱膨潤変形技術の研究[ 静(微小変形)の問題解決 ]

  • 複合材構造の吸脱湿変形の予測技術の確立及び抑制技術の研究(予測技術)
    • 複合材構造の精緻な変形予測モデル構築
  • アセンブリ構造における微小変形計測技術の研究(検知技術)
    • 軌道上の変形の検知技術の研究
  • 変形補正機構の研究(補正技術)
    • 軌道上での変形補正機構の研究

擾乱抑制技術の研究[ 動(擾乱)の問題解決 ]

  • 擾乱応答予測手法の研究(予測技術)
    • 擾乱解析で必要となる低周波から中間周波数帯まで解析可能な手法の構築
  • 振動アイソレータの研究(検知・補正技術)
    • 機能性材料等の使用した高機能振動アイソレータの研究