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先導する研究航空機・将来宇宙輸送機への水素燃料の適用技術の研究

カーボンニュートラル社会の実現を目指して、航空機と将来宇宙輸送機に水素燃料を適用するための技術開発を行っています。これまでのH-IIAロケットやH3ロケットの開発で培われた液体水素燃料の供給技術、安全管理技術を航空機に適用することで、二酸化炭素を一切排出しない水素航空機の実現を目指しています。また、従来のロケットよりも推進剤の消費量を低減できる水素燃料の空気吸込式エンジンの研究開発に取り組んでいます。将来は、空気吸込式エンジンを搭載した有翼宇宙輸送機を開発することで、地球上の高速二地点間輸送や高頻度の宇宙輸送を実現することを目指しています。

高速二地点間輸送機
有翼宇宙輸送機

研究の意義価値

地球温暖化の防止のために、国際民間航空機関(ICAO)においても、航空輸送分野の二酸化炭素の排出を増加させない方針が示されています。これを受けて、欧州を中心にして、水素航空機の開発の機運が高まっています。大規模風力発電等の再生可能エネルギーの発電量の変動を吸収する媒体として水素燃料を大量に製造して航空機に適用することが検討されています。水素燃料は、バイオ燃料よりも製造コストが低く、大量生産に向いている燃料と考えられています。

水素燃料を大型旅客機に適用する場合、従来のエンジンをベースにした水素ジェットエンジンを開発する必要があります。このため、水素を安定的に燃焼させる水素燃焼器、液体水素を精密に制御してエンジンに供給する液体水素電動ポンプ、液体水素を貯蔵できる軽量の複合材タンクの技術開発に取り組んでいます。

水素航空機の技術課題

宇宙基本計画において、我が国の宇宙輸送システムの競争力強化のため、民間事業としても成立する高速二地点間輸送機の実現による輸送需要の拡大を目指す方向性が示されています。また、酸化剤として空気を利用することで推進剤の使用量を大幅に削減できる空気吸込式エンジンの技術開発の重要性が認識されています。

高速二地点間輸送機は、超高速で長距離を飛行するため、ロケットと同様に、エネルギー密度の高い水素燃料を適用することで、機体規模を最小化できます。JAXAでは高速二地点間輸送機に適用できる極超音速水素エンジンの研究開発を進めており、これまでに、予冷ターボジェット方式による離陸状態からマッハ4飛行状態までの作動実証を行っています。また、マッハ4~8で作動するスクラムジェットの研究開発実績を基にして、極超音速水素エンジンとスクラムジェットを組み合わせた複合エンジンの設計検討を進めています。

極超音速水素エンジンの研究開発

研究の目標

本研究では、政府のグリーン成長戦略に基づいて、民間企業と連携しつつ水素航空機技術の研究開発に取り組む予定です。2025年度までに水素燃焼器、液体水素電動ポンプ、液体水素複合材タンクの要素技術を確立し、水素ジェットエンジンの技術実証に適用することを目指しています。

また、有翼宇宙輸送機の研究開発として、極超音速水素エンジンの技術実証を進めるとともに、水素航空機技術の研究開発で得られた要素技術を適用して、2030年以降に空気吸込式エンジンを搭載する有翼宇宙輸送機や高速二地点間輸送機を実現することを目指しています。

水素航空機・有翼宇宙輸送機 研究開発構想