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先導する研究 環境適応宇宙ロボティクスの研究 超小型三軸姿勢制御

人工衛星の軌道上運用においては、衛星から地上に送信される各種のテレメトリデータにより、衛星の健康状態等を監視しています。しかし、テレメトリデータは何千項目もあり、運用者がこれを確実に監視するには大きな労力が必要です。

この研究では、人工知能分野における機械学習/データマイニング技術をこの宇宙機のテレメトリデータ監視に適用することにより、確実で効率的な運用を行うとともに、運用者の負担を軽減し、衛星のより高度な自動化・自律化運用の実現をも目指しています。

研究の概要

人工衛星の小型化や低コスト化、省スペース化を実現するためには、姿勢制御に必要な装置(ホイールやジャイロ等)の重量や体積を可能な限り低減することが効果的です。

本研究では、ホイールやジャイロ等を1つにパッケージ化して人工衛星などに搭載できる小型モジュールの研究開発を行っています。
従来よりも小型かつ軽量の人工衛星の実現のほか、さまざまな分野での応用をめざしています。

31mmサイズのモジュールがJEM自律移動型船内カメラ(Int-Ball)に搭載されています。

詳しくはこちら「超小型三軸姿勢制御モジュール 「きぼう」船内ドローン(Int-ball)への応用」

研究紹介動画

超小型三軸姿勢制御モジュール(2分01秒)

超小型三軸モジュール(10cm)の実験映像(0分29秒)

超小型三軸モジュール(31mm)の実験映像(1分07秒)

研究の成果(より詳細な研究内容)

超小型三軸姿勢制御モジュールの概要

三軸姿勢制御モジュール試作機の外観
総重量(無線通信機・バッテリを含む) 1.34 kg
サイズ 10×10×10 cm3
  • MEMSチップの慣性センサ6台(1台でレート3軸、加速度3軸計測可能)を頂点に配置することで、姿勢推定精度を向上しています。
  • 3軸ホイールのモータにはブラシレスDCモータを使用し、モータホイール回転数の計測にはモータ内蔵のホールセンサを使用しています。
  • ホイール各軸には新たに開発した薄型電磁ブレーキを搭載しています。
  • 制御計算機はシステムオンチップ(PSoCR)を搭載し、50Hz周期で計測制御します。
  • 電磁ブレーキは励磁時に2.1Nmの制動トルクを発生し、消磁時間も含め、6000rpmのホイール回転数を100ms以内にゼロとすることができます。
  • その他、テレコマ送受信用無線通信機、小型リチウムポリマバッテリーなどで構成されています。

超小型三軸姿勢制御モジュールの応用先

本モジュールは、以下のような用途での応用が考えられます。

  • 1Uクラスの超小型衛星の姿勢制御モジュール
  • 惑星探査ローバ
  • 集団群制御モジュール
  • 航空ドローンの姿勢安定モジュール

開発した超小型三軸モジュール技術は、誘導制御計算機・6軸慣性センサ・3軸ホイールを約50g、約31mm角サイズにまでの集約化が実現されています。並進制御のマイクロファン機能も拡張具備可能です。

31mmサイズのモジュールは、「JEM自律移動型船内カメラ(Int-ball)」のメイン制御系として搭載され、現在の位置・姿勢を正確に把握し、目標の位置・姿勢に制御する役割を担っています。

研究実績

発表論文

  • 巳谷, 茂渡, 神澤, 山中, "超小型三軸姿勢制御モジュールの研究", 第59回宇宙科学技術連合講演会, かごしま県民交流センター, 2015
  • Mitani, Shigeto, Kanzawa and Yamanaka, "High-Agility, Miniaturized Attitude Control Sensors and Actuators in an All-in-one Module", ISTS30 Special Issue, Vol.14 (2016) No.ists30
  • Kato, Tanishima, Yanagase, Tsumaki and Mitani, "Control of Rocket-propelled Miniature Exploration Robot", ICRA, 2017
  • 巳谷, 後藤, 此村, 荘司, 萩原, "クルーリソースを軽減するJEM自律移動型船内カメラロボットの開発", 第61回宇科連, 朱鷺メッセ, 2017
  • 茂渡, 巳谷, 谷嶋, 後藤, "1/30Uサイズ三軸モジュールの研究とJEM自律移動型船内カメラロボットへの応用", 第61回宇科連, 朱鷺メッセ, 2017 ★若手奨励賞(最優秀賞)受賞
  • 谷嶋, 巳谷, 茂渡, 松本, 後藤, "JEM自律移動型船内カメラロボット制御系の地上検証結果", 第61回宇科連, 朱鷺メッセ, 2017
  • 松本, 巳谷, "JEM自律移動型船内カメラの障害物回避問題", 第61回宇科連, 朱鷺メッセ, 2017
  • Shigeto, Mitani, Tanishima and Goto, "Development and evaluation of the 1/30U small-sized 3-axis attitude control module, and its application for the JEM Internal Ball Camera Robot", Proc. of 32nd AIAA/USU Conference on Small Satellites, 2018.
  • Mitani, Goto, Konomura, Shoji, Hagiwara, Shigeto and Tanishima, "Crew-supportive Autonomous Mobile Camera Robot on ISS/JEM", i-SAIRAS 2018.
  • Tanishima, Mitani, Shigeto, Matsumoto, Arai, Goto and Suzuki, "Effective and Accurate Method for Ground and On-orbit Verification of Control Systems for Free-flying Robot with Low Thrust Force", i-SAIRAS 2018.
  • 茂渡, 巳谷, 村田, 白澤, 野田, "磁気軸受を用いた小型高角運動量リアクションホイールの基礎検討", 電磁力関連のダイナミクスシンポジウム, 2018

特許

件名 発明者 出願日 番号
制動機構、制動機構を備えるリアクションホイール、
リアクションホイール装置、リアクションホイールシステム
巳谷、茂渡 2015年6月29日 特開2017-17807
リアクションホイール装置 巳谷、茂渡 2016年7月29日 特開2018-019568
モータ回転速度検出装置 巳谷、茂渡 2016年7月29日 特開2018-017697

外部資金

  • 科研費若手(B)「磁気軸受と電磁ブレーキを用いた超小型高性能リアクションホイールの開発」
    研究代表者:茂渡、 期間:2017-2018年、 研究課題/領域番号:17K18428

広報

他、国内全国紙掲載、米国・欧州を含む海外12ヵ国以上による報道多数。

講演会

  • JST/JAXA主催 新技術説明会「きぼう船内ドローン「Int-Ball」の姿勢制御技術」(2017年10月12日)
  • 宇宙科学研究所 宇宙科学談話会「きぼう船内ドローン「Int-Ball」の飛行制御技術」(2017年12月10日)
  • 電気学会東京支部所行事 第2回茨城支所講演会「きぼう船内ドローン「Int-Ball」の開発で活かされた人工衛星の姿勢制御技術」(2017年12月13日)
  • TED×Tsukuba(2018年10月21日)