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先導する研究 環境適応宇宙ロボティクスの研究 「ROS2 and cFS System (RACS2) Bridge」ソフトウェア、
ISS船内の自律カメラロボット「Int-Ball2」で
軌道上実証に成功

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、オープンソースソフトウェア「ROS2 and cFS System(RACS2)Bridge(*1)」の軌道上実証実験を2025年5月に実施し、機能確認に成功しました。
この実験は、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された自律カメラロボット「Int-Ball2(*2)」の技術実証プラットフォーム(*3)を用いて行われました。この実証の意義は、RACS2 Bridgeの機能を用いて地上で広く使われているROS2(*4)と、信頼性の高いcFS(*5)制御環境を両立できることを証明した点にあります。これにより、宇宙分野に関心の高い地上ユーザーにとって、宇宙ロボット開発への参入が一層身近になり、大きな一歩となります。

ISS内の「Int-Ball2」の技術実証プラットフォームにRACS2 Bridgeを搭載し、RACS2 Bridge上で動作する物体認識AIでリアルタイム識別した映像例(大西宇宙飛行士を「Person(人間)」として認識)
* 詳細は実証実験の内容を参照

RACS2 Bridgeとは

RACS2 Bridgeは、地上ロボティクスの標準プラットフォームであり、地上ロボット開発において広く使われるROS2と、米国航空宇宙局(NASA)などで宇宙ミッションに使用された実績のある制御フレームワークcFSを接続し、それぞれの特長を活かすためのソフトウェアです。ROS2は様々なライブラリ群やツール群を備えておりモジュール化が容易で、開発の柔軟性に優れる一方、cFSは宇宙機の厳しい環境下で安定して動く高信頼設計が特長です。

RACS2 Bridgeを用いた宇宙機アーキテクチャ
* 本図中のcFS関連部分はNASA開発のcFS(脚注)を参考に作成(出典:NASA)

RACS2 Bridgeは、ROS2のトピック通信とcFSのメッセージ構造を相互に変換する「メッセージ・ブリッジ」として機能し、Apache 2.0ライセンスの下でGitHubに公開されています。教育用のサンプルや通信構成も含まれており、研究者や学生をはじめ、開発コミュニティ全体への門戸を広げています。
さらに、RACS2 Bridgeは単なるソフトウェア接続にとどまらず、「将来的にはROS2に対応した宇宙ロボット向けハードウェア設計まで含む共通プラットフォーム」への進化を目指しており、OSSを通じた産学連携の強化を視野に入れています。

ISS船内の自律カメラロボット「Int-Ball2」

実証実験の内容

ISS内の「Int-Ball2」の技術実証プラットフォームにRACS2 Bridgeを搭載し、ROS2上で動作する物体認識AI「MobileNet」を利用して宇宙飛行士を「Person」、としてリアルタイムに識別しました。そのデータはcFS側へ送信され、ROS2ベースの高度なAI処理とcFSのリアルタイム制御が、軌道上環境でも正常に連携動作することを実証しました。

RACS2 BridgeのInt-Ball2軌道上実証用のアーキテクチャ
* Int-Ball2ソフトウェアは制御部を中心にROS 1が使用されており、ROS1-ROS2間をROS Bridgeで通信を行いました。
* 本図中のcFS関連部分はNASA開発のcFS(脚注)を参考に作成(出典:NASA)
大西宇宙飛行士を「Person(人間)」として認識 (再掲)

今後の展望

今回の成果を踏まえ、今後はソフトウェアを含んだ宇宙機システムの開発環境の整備を進める計画です。また、教育分野にも広がるOSS基盤として、世界中の開発者が参加できるプラットフォームへと成長し、宇宙ロボティクスの発展に貢献していきます。

Space ROSプロジェクトとの関係

Space ROS(*6)は、米国PickNik Robotics社がNASAの支援の下進めているRACS2そのものを宇宙仕様にすることを目的にするオープンソースプロジェクトです。RACS2 Bridgeプロジェクトは、このSpace ROSに対してもPull Requestを通じて提案を行い、参加しています。両プロジェクトはお互いに補完し合う協力関係にあります。

参考

関連リンク

参考文献