研究紹介

合成開口レーダの軌道上画像化の研究

研究概要

本研究は、衛星の自律化、中でも取得した情報を衛星上で集約・解釈し、物体(自然、人工物)や状況を把握する研究です。例えば、昼夜を問わず観測可能な合成開口レーダは、海洋上の船舶や墜落した飛行機などの人工物の識別・捜索に用いることが期待されています。
現状は観測データを地上に伝送し、必要な情報を抽出したものをプロダクトとして配信するまでに半日以上の時間を要していますが、本研究は、合成開口レーダの観測データから、ユーザが必要とするデータを準リアルタイムで識別する技術に必要となる衛星上データ処理アルゴリズム、 および並列計算能力に優れるデジタル回路を活用して、衛星搭載を想定した計算機の開発を目指します。

JAXA's 2019年1月号

画像化アルゴリズムの研究

衛星に搭載する計算機に、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を利用することを考慮した、合成開口レーダの画像化アルゴリズムを検討しています。

従来、合成開口レーダの画像化は処理に時間がかかることから、衛星搭載計算機ではなく、地上システムで行ってきました。ただし、データ量が膨大で、全体のデータを処理したうえでユーザが必要とするデータを抽出するなど、処理に時間がかかっていました。
本画像化の処理を高速化するため、軌道上で合成開口レーダによる観測をしながら、実時間での画像化を可能とするアルゴリズムの研究を行っています。高速処理のためFPGAを並列化して使用することを前提とし、FPGA並列化の際に問題となりやすい 条件分岐の設定にも配慮しています。

これまでに、レンジドップラーアルゴリズムをベースとする、ALOS及びALOS-2データをFPGAで処理するアルゴリズムが実現しました。

オンボード画像化の研究

「画像化アルゴリズムの研究」で得られたアルゴリズムを用いて、軌道上で画像化するための衛星搭載用ハードウェアの研究を行っています。

衛星上でデータを処理し、観測データの中より必要なデータを抽出してから地上に送信することで、データ量を抑えつつ、ユーザに迅速にプロダクト提供することを目指しています。

第一段階では、地上用のハードウェアの研究を行いました。
これまでに、ALOSデータを実時間処理する地上用ハードウェアを実現し、さらにその成果を応用し、ALSO-2データを高速に処理する地上用ハードウェアを開発しました。

第二段階として、衛星搭載用ハードウェアの研究を行いました。
その結果、ALOSデータを高速に処理する衛星搭載用ハードウェアFLIP (Fast L1 Processor) の開発を実現しました。ハードウェアに対して振動試験・熱真空試験等の環境試験を実施し、打上げ環境や軌道上環境でも期待する性能を発揮することを確認しています。

合成開口レーダ(SAR)データを軌道上で画像化する装置の共同開発成果について

ここで得られた成果は、将来のJAXA地球観測衛星への搭載だけでなく、民間の衛星での積極的な利用も目指しています。

36機の小型SAR衛星による準リアルタイムデータ提供サービス事業の
創出に向けたJ-SPARC事業コンセプト共創の開始について

画像化ハードウェア構成
ソフトウェアによる画像化(左)とハードウェアによる画像化(右)の比較
処理するアルゴリズムは少し異なるものの、違いはほとんどありません。
搭載用画像化装置FLIP
人工物検出・特徴量抽出アルゴリズムの研究

SAR画像から海洋の人工物を検出し、その特徴量を抽出するアルゴリズムを検討中です。

これまでに、標準偏差フィルタ及び深層学習による人工物の検出を行うアルゴリズムの基本的な枠組みがわかってきています。
人工物検出・特徴量抽出アルゴリズムは、画像化アルゴリズムと同様、FPGA化を目指しています。

標準偏差フィルタによる人工物の検出
深層学習による人工物の検出

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