展開型軽量平面アンテナの軌道上実証(DELIGHT)
展開型軽量平面アンテナの軌道上実証DELIGHT(DELIGHT: DEployable LIGHtweight planar antenna Technology demonstration)では、新型宇宙ステーション補給機HTV-Xの1号機を軌道上プラットフォームとして利用し、将来の大型宇宙構造物構築を見据えた展開型軽量平面アンテナに関する実証実験を行います。
研究の背景
宇宙太陽光発電システム(SSPS: Space Solar Power Systems)は、クリーンなエネルギーを大規模に、安定的に、多地点に供給できる可能性を有しているため、エネルギー、気候変動、環境等の人類が直面する地球規模課題の解決の可能性を秘めています。
これまでに世界で様々なコンセプトのSSPSが提案されていますが、どれも数百m~数kmの大型宇宙構造物を必要とします。しかし、現在の技術レベルを踏まえると、その実現に向けては、構造物の規模を段階的に拡大しながら軌道上実験を積み重ねる必要があります。また、途中段階の成果であっても社会還元できることが研究開発を継続するために必要です。そのため、静止軌道からの降水観測が可能なレーダ(以下「静止降水レーダ」という)への適用を見据え、面積30m×30m以上、面密度3kg/m2以下の大型平面アンテナを実現することを当面の目標としています。静止降水レーダのイメージを図3に示します。
この目標を達成するための主要技術課題は、30m級大型平面アンテナの構築と軽量化です。そのため、これらの課題を解決するために「パネル展開・結合機構」と「軽量平面アンテナ」を提案し、研究開発を実施しています。
DELIGHTミッションの概要
DELIGHTでは、HTV-X1号機を軌道上プラットフォームとして利用し、「パネル展開・結合機構」を実装した展開型軽量パネルを軌道上で展開し、その際の展開挙動や展開後の構造特性を計測します。また、同パネルの一部に搭載した「軽量平面アンテナ」で地上局からの電波を受け、受信レベルの計測を実施します。さらに、ミッションの意義・価値を高めるために、次世代宇宙用太陽電池セルの実証も実施します。DELIGHTの全体イメージを図4に示します。
技術的課題への今後の取り組み
30m級大型平面アンテナおよび更に大型の宇宙構造物の実現に向けて、構築と軽量化以外に、以下のような技術的課題があります。これらの課題を解決する方法も並行して検討していきます。
- 構築中/構築後の姿勢・軌道制御
- 熱変形補償
- デブリの影響評価
- 保守、解体