オンボードAI技術の概要
高性能計算機とソフトウェアプラットフォームの搭載により、以下の段階的な実証を目指します。
1. アプリの書換可能
衛星機能のソフトウェア化の実現
従来、衛星運用に係るプログラムやアプリは打上前に地上試験を経て設定されるため、打上後に積極的な書き換えは行なわれません。
本技術実証では、打上後でも軌道上でプログラムの書き換えやアプリの変更を誰もができようにすることで、ユーザニーズへのこまやかな対応や、新しい衛星利用サービスの提供を可能にすることを目指しています。パソコンをバージョンアップするように、衛星をアップデートできることを実証します。
2. 軌道上での高度なAI処理
AIによる作業高効率化とダウンリンク回線の混雑解消に貢献
普段私たちが目にする衛星データができるまでには、撮影したデータが地上へ送られたあと、様々な画像処理や補正を行う必要があります。
本技術実証では、高度な計算処理やAIアプリを動作させ、撮像後すぐに地上作業と同程度の処理を軌道上で行い、さらに撮像対象の検出・推論まで行うことで、欲しい情報がエンドユーザに届くまでにかかる待ち時間を、数十時間短縮できることを実証します。また軌道上でAI処理が行われ必要な情報のみに絞られることで、細い回線でも送れる情報量に縮退でき、ダウンリンク回線の混雑解消に貢献できると考えています。
3. 衛星連携
複数衛星間・地上設備とのダイナミックな分担変更
従来衛星は決められた衛星と地上局との間だけで通信を行っていますが、オンボードAIを搭載することで、衛星間で自律的に立てた観測計画を共有し、実行に最適な軌道を通る衛星へ観測要求を転送することができるようになります。
複数衛星を連携させ、指示を引継いだ衛星が観測予測や識別を自律的に行うアルゴリズムを実証することで、対象を継続して観測することを目指します。また、観測されたデータは軌道上で分析され、非可視領域からも迅速にエンドユーザに届けられることを実証します。

ヘテロジニアスな高性能オンボード計算機
H2-OBC(Heterogeneous High-end On-Board Computer)
研究開発部門において2021年より研究開発してきた高性能計算機です。10×10×10cmという小型サイズでも高度なAI処理を可能とし、軌道上でのAIアプリケーション等ソフトウェアの容易な変更を可能とするソフトウェアプラットフォームを搭載しています。
本計算機は100%民生品で組み立て可能で、将来の純国産化を念頭に開発を進めています。

- 電力
- 約40W
- サイズ
- 10×10×10cm
- 質量
- 約1Kg
- 温度
- -40℃~+70℃
- 電源電圧
- 12V DC
- 開発言語
- C/C++/python/Fortran
本実証に関する取組
- 本実証は研究開発部門が進めてきた研究の一部を2022年度より衛星DX研究会テーマBで議論し、ご賛同いただいた企業の皆様と共に共同研究を進めてきました。
- 軌道上実証にあたっては、共同研究相手方である株式会社QPS研究所が保有する衛星にJAXAが開発した機器を搭載し、技術実証を行う予定です。
- 2025年度打上予定のオンボードPPPの軌道上実証でも、オンボードAIの技術が活躍する予定です。
- 問合せ先:
- 小型技術刷新衛星研究開発プログラム(刷新P)
- e-mail:
- info-SASSHINP@ml.jaxa.jp