地球観測センサの研究
人工衛星などに搭載される地球観測センサは、400km~3万6000km離れた宇宙から地球の災害監視や陸域・海洋・気象の観測を行う「目」です。 近年では宇宙の厳しい環境でも5年~10年以上の性能維持と、高付加価値のデータ取得を可能とするセンサシステムが要求されます。
人工衛星の目となるセンサシステムは使用する電磁波の種類によって、何が見えるか用途ごとに使い分けられます。 地球観測用センサシステムには、これまでの高度化や、新領域の開拓を通じて社会問題の対策・解決に向けた基礎データを取得する大きな期待が寄せられています。
センサ研究グループでは、国内外の利用者・研究者コミュニティーと連携し、次世代の地球観測用センサを使い、社会課題解決に向けたミッション実現に向けた研究を行っています。
将来型センサシステムの研究
ライダーの研究
レーザを使って、世界で初めて衛星軌道から森林の樹木(高さ)や、風向風速の高度分布計測を目指します。
ライダーは人工衛星軌道から1mの地表変化や、微粒子(直径数μm~)を検出します。将来は風向風速の高度分布計測も期待しています。世界でも例のない平均出力100W、瞬間出力10メガW以上の 宇宙用パルスレーザ送信機の連続運転に必要な研究を行い、高さ精度3mで熱帯林を計る植生観測用ライダー(MOLI)や次世代のさらに先のシステム実現を目指します。
非冷却赤外検出器を使った小型赤外カメラ(CIRC)の開発
森林火災や火山、都市部のヒートアイランド現象の観測を行います。将来的には複数の衛星に搭載し、高頻度な観測を目指します。
CIRCは森林火災の検知を主目的とした赤外センサです。冷却機構を必要としない非冷却型の検出器を採用することで、小型で軽量(質量3kg)、かつ低消費電力(<20W)を実現しています。 本研究では、宇宙用として世界最大フォーマット(640×480画素)の小型赤外カメラを開発、2013年度打上げのだいち2号に搭載し、軌道上実証を行っています。
大型展開アンテナによる次世代Lバンド合成開口レーダの研究
日本がリードしているLバンドレーダーは天候にかかわらず地表面を観測でき、地殻変動や森林観測にも適しています。
Lバンド(周波数1.2GHz帯)を使った衛星搭載合成開口レーダ(SAR)は日本が誇る技術です。だいち2号にも使われていて、災害や森林伐採の監視を行っています。 本研究では次世代機として、3m分解能、高感度(NESZ=-25dB)を確保しつつ世界最大の350km観測幅となるレーダの実現を目指します。
要素技術の研究
次世代赤外検出器(TypeⅡ超格子)の研究
高感度の次世代赤外線検出器の研究。国産技術で実用化に向けて海外機関を一歩リード。
TypeⅡ超格子は従来の赤外線検出器を越える感度が期待される量子型赤外線検出器です。 本研究では、気象観測に於いて特に重要な波長帯(15μm)まで検出可能なTypeⅡ超格子赤外検出器を試作し、世界初となる画像を取得しました。 今後は、大学、企業等と協力し、さらなる感度向上(比検出感度1011cm Hz1/2W-1以上)を目指します。
光学校正技術の研究の研究
光学センサの校正を行い、物理数学モデルや観測衛星間の相互データ利用を保証します。
光学センサは、打上前の正確な値付け(輝度校正)が不可欠です。本研究では、光学センサのラジオメトリック特性の校正・性能評価試験を実施するための試験装置・技術の開発及び標準化、 開発した試験装置・技術の維持管理と運用を行い、様々なプロジェクトでの光学校正試験に貢献しています(校正精度1~2%程度)。今後は、さらなる精度向上、対象波長域拡大を目指します。
光学校正試験装置
- 積分球
- 単色輝度計
- 定点黒体炉
- 比較標準分光輝度計