研究紹介

観測装置

低軌道衛星追尾装置

3軸経緯儀

図1 低軌道衛星観測室
図1 低軌道衛星観測室

左:図2 3軸経緯儀の概観 右:図3 3軸経緯儀の詳細
左:図2 3軸経緯儀の概観
右:図3 3軸経緯儀の詳細

天体望遠鏡では従来から、鏡筒を支える架台として、赤道儀あるいは経緯儀が使われています。しかしながら、低軌道デブリを観測する場合、赤道儀は北極点が特異点となり、経緯儀は天頂が特異点となるためその近辺を通過するデブリを追尾するには不適当です。これはその付近に達すると特異点を避けるために180度高速回転しなければならないためで、特異点付近の観測が不可能なばかりでなく、架台自体にも過度の負荷を強いることになります。従って、低軌道デブリを追尾するには、天空に特異点の無い架台が必要になります。そこで考え出された一つの形式が、3軸経緯儀です。

3軸を使用することにより、2軸の赤道儀や経緯台で生じる特異点をなくすことができます。この方式は、ベーカー・ナン・シュミットカメラに採用されて好成績をあげており、特異点の無い高速追尾が可能な形式として知られています。そこで、未踏技術研究センターではこの方式を採用し、3軸経緯儀を構築しました。図2および図3に3軸経緯儀の概観および詳細を示します。



35cm光学望遠鏡

3軸経緯儀に搭載する光学系は、市販で購入できるものとしては最大級の口径35cmをもつセレストロン社(アメリカ)製C14型シュミットカセグレン望遠鏡を採用しました。この光学系は、カセグレン焦点であるため焦点距離の長さと比較して鏡筒が比較的小さくなるため、低軌道衛星のように高速で移動する天体を追尾する際、架台に大きな負荷をかけずにすむという利点があります。また、23kgという軽さも同様の理由で魅力的でした。
詳細を表1に示します。

表1

項 目 特 性
有効径 355mm
焦点距離 3910mm
口径比 F11
分解能 0.3″
集光力 肉眼の2500倍
限界等級 15等
実視界 6.7°


CCDカメラ

図4 高速読み出しCCDカメラ(光学系取り付け例)
図4 高速読み出し
CCDカメラ
(光学系取り付け例)

光学系に設置するCCDカメラはNIL(ナカニシイメージラボ)製ICC-130Mです。高速で移動する低軌道の人工衛星やスペースデブリを追尾する場合、観測可能な時間内に多くの画像を得るためには高速読み出しが可能なCCDカメラが必要です。ICC-130Mは毎秒10フレームの画像の撮影が可能であり、我々の要求に十分応えることができます。重量も600gと軽く、架台への負荷を軽減してくれます。
ICC-130Mの概観を図4に、詳細を表2に示します。


表2:CCDカメラ

項 目 特 性
CCD素子 Sony ICX085AL
画素数 1280×1024
画素サイズ 6.7μm×6.7μm
受光面積 8.6mm×8.6mm
A/D変換 12bit/18MHz
フレームレート 10画像/秒
冷却方式 ペルチェ冷却
冷却温度 室温-25℃
露出時間 0.0001~1800秒
寸法 80×90×95mm
重量 600g


入笠山光学観測施設

高度36000kmの静止軌道は気象衛星や放送衛星等が利用する非常に重要な軌道です。静止軌道には使用済みの人工衛星等による多数のデブリが存在していますが、1mサイズ以下のものはカタログ化されていません。未踏技術研究センターでは、静止軌道付近のデブリを観測するため、長野県伊那市高遠町の入笠高原に入笠山光学観測施設を設置しました。

ここでは光学望遠鏡によって観測した多数の画像データを効率的に処理して、通常の手法では見つけることのできない数十cm級の小さい未知デブリを検出する画像解析手法の確立を目指しています。これらの研究で開発された技術は将来、未知デブリのカタログ化に利用され、宇宙デブリ問題の解決に貢献します。

また、光学望遠鏡による観測システムの開発、並びに独自に開発しているソフトウェアによるデブリ観測のほかにも、小惑星や彗星などの移動天体の検出も行っています。

2つのドームには35cm望遠鏡と25cm望遠鏡が設置されています。それぞれの望遠鏡には高感度のCCDカメラが取り付けられています。



長野県伊那市高遠町入笠山光学観測施設(天文台コード:408)北緯35度54分05秒、東経138度10分18秒、高度1,870m
長野県伊那市高遠町入笠山光学観測施設(天文台コード:408)
北緯35度54分05秒、東経138度10分18秒、高度1,870m


静止軌道デブリ等観測装置

35cm観測システム

35cm+2K2Kシステム主要規格等
項 目 規 格
望遠鏡 高橋製作所 ニュートン式 ε-350,
口径350mm, f=1,248mm, F/3.6
イメージサークルΦ69mm, FOV3.2
赤道儀 昭和機械製作所 フォーク式 25EF
ドーム ニッシンドーム 3m
CCDカメラ N.I.L.製 2k×2k高速読出し
(e2v裏面照射型CCD)
ピクセルサイズ:13.5μm×13.5μm
電子冷却+冷却水循環
視野 1.28°×1.28


35cm望遠鏡
35cm望遠鏡
2K2K高感度CCDカメラ
2K2K高感度CCDカメラ


25cm観測システム

25cm望遠鏡ほかと4K4K大型モザイクCCDカメラ
項 目 規 格
望遠鏡 高橋製作所 ベーカー・リッチ・クレチアンBRC-250
口径250mm, f=1,268mm, F/5.1
イメージサークルΦ100mm
赤道儀 昭和機械製作所 エキセントリックエルボ式 25EL
ドーム ニッシンドーム 3m
CCDカメラ N.I.L.製 4k×4k大型モザイク高速読出し
(e2v裏面照射型2k4k×2)
ピクセルサイズ:15μm×15μm
冷凍機冷却(冷媒循環型)-100℃°
視野 2.7°×2.7


25cm望遠鏡ほか
25cm望遠鏡ほか
4K4K大型モザイクCCDカメラ
4K4K大型モザイクCCDカメラ