研究紹介

モデル化・解析

今後のデブリの変動を予測するモデルや、デブリの衝突率の解析ツール、今後デブリを出さないようにするための支援ツールを開発しています。カタログ化されているデブリ(地上からの観測により、軌道が追跡されているデブリ。低軌道で約5~10cm以上、静止軌道約1m以上)同士の衝突はすでに5回発生していますが、今後も5~10年に一度衝突が起こると予測されています。また現在低軌道では、微小デブリが衝突して宇宙機に不具合を起こす確率は他の故障に比べても無視できないレベルに達しており、デブリ防御対策をとる必要があります。今後宇宙開発を持続するために、デブリから宇宙機を護ると同時に、これ以上デブリを発生させないようにしていく必要があります。



デブリ推移モデル

デブリ環境が今後どうなっていくかを予測する推移モデルを九州大学と共同で開発しています。図1は2009年以降、爆発は発生しない、低軌道衛星はミッション終了後25年以内に再突入する軌道に移動するというデブリ低減ルールを90%の宇宙機が遵守する場合(10%程度は失敗の可能性があるため)の、低軌道のデブリの数の予測です。図のように、今後デブリ低減ルールを十分守ったとしても、今すでに軌道上にあるデブリ同士の衝突により数が増加してしまうことが予測されています。このようなデブリの自己増殖は、各国の推移モデルで確認され、どうしたらよいかが国際的に議論されています。推移モデルにより、どのようなデブリ対策を行えば効果的に将来のデブリを減らすことができるかを評価することもできます。


図1 2009年以降の推移予測結果
図1 2009年以降の推移予測結果

60回のモンテカルロシミュレーションの平均値。今後の爆発はなし、今後の打ち上げは2001年から2008年までの履歴を繰り返し、ミッション終了後デオービットの成功率90%と仮定。

<出 典>
眞庭, 花田, 河本, 環境推移モデルによるスペースデブリの長期環境推移について, 第4回スペースデブリワークショップ 宇宙航空研究開発機構特別資料JAXA-SP-10-011, pp.135-144.


デブリ衝突損傷リスク解析ツール

宇宙機の形状や姿勢、他の部位による隠蔽も考慮して、どの部分にどのくらいデブリが衝突して損傷を与える可能性があるかを解析するツールを開発し、JAXAのプロジェクトを支援しています。微小デブリが衝突して重大な影響を受ける機器は何らかの手段で防御する、あるいは衝突確率の低い位置に搭載するなどの対策をとる必要があります。


図2 デブリ衝突頻度予測の解析例
図2 デブリ衝突頻度予測の解析例


デブリ発生防止標準支援ツール

デブリの発生を低減するために、JAXAはデブリ発生防止標準を制定しており、例えばミッション終了後、低軌道(高度2000km以下)の宇宙機は25年以内に軌道からいなくなること、静止軌道は約300km軌道高度を上昇させることなどが求められています。そういった要求を満足しているかどうか評価するためのツールを開発し、JAXAプロジェクトに試験配布しています。

宇宙機の軌道上寿命(大気抵抗で高度が下がり、大気圏に再突入して燃え尽きるまでに何年かかるか)や発生防止標準に適合するためにどのくらいの燃料が必要かを計算したり、簡易的に、大気圏で燃え尽きず地上に落ちてくる可能性を評価したりすることができます。


図3 デブリ発生防止標準支援ツール
図3 デブリ発生防止標準支援ツール


参考文献

  • 有吉,花田,河本,デブリ推移モデルによる将来予測,第5回スペースデブリワークショップ 宇宙航空研究開発機構特別資料JAXA-SP-13-018,pp.105-112, 2013.
  • 有吉,花田,河本,除去対象デブリの選定方法とその効果,第56回宇宙科学技術連合講演会,1C07,2012.
  • Maniwa, K., Hanada, T. and Kawamoto, S.: Benefits of Active Debris Removal on the LEO Debris Population, 27th ISTS-r-2-04, 2009.
  • 金,八田,東出,河本,デブリ衝突損傷リスク解析ツール(TURANDOT)の機能拡張,第5回スペースデブリワークショップ 宇宙航空研究開発機構特別資料JAXA-SP-13-018,pp.290-300, 2013.
  • 河本, 金, 八田, デブリ解析ツールの開発について, 第52回宇宙科学技術連合講演会,2H16,2008.
  • Kawamoto, S., Narumi, et. al., : “SPACE DEBRIS MODELING IN JAPAN”, IAC-07-A6.2.04, 2007.