研究紹介

移動天体検出ソフトウェア(研究期間:2002~2004)

JAXA研究開発部門が進める技術移転推進研究の一環として、当部門が所有する特許を実用化し、小惑星や人類の存亡に関わる地球接近天体等の新発見に大きく貢献する移動天体検出ソフトウェアの開発を行ってきました。その結果、2004年6月には本ソフトウェアの実用化(商品化)に成功しました。

アストロアーツ・ホームページ
http://www.astroarts.co.jp/products/stlhtp/index-j.shtml



研究概要と目的

  • 移動天体(小惑星、彗星等)を自動検出
  • 重ね合わせ法(特許出願済み)により、従来の手法では検出不可能な暗い物体の検出
  • 自作ソフトにより、未知小惑星を41個発見(20等級台を含む)(35cmが1mクラスの望遠鏡能力に匹敵)

  • 汎用ソフトを開発、商品化し、国内外の観測施設、アマチュア観測家が利用
  • ソフトに改良を加え、JAXAでは295個の小惑星を発見し仮符号を取得
  • 新たな応用が期待される(交通調査、遭難者探索等)



未知小惑星発見

重ね合わせ法により未知小惑星を発見

撮影画像
撮影:2002/03/12-13
撮影画像
左:露出3分の画像(1枚の画像では暗くて見えません)
右:重ね合わせ法により検出された未知小惑星(20.1等級)
撮影:2002/01/12-13

一見して何も見えない星空でも「重ね合わせ法」で40枚の画像を重ね合わせると・・・20等級の未知小惑星が浮かび上がってきます!!
★35cm光学望遠鏡での20等級クラスの暗い小惑星の発見は世界でも最高水準

現在、世界で発見される小惑星のほとんどは20等級を超えていますが、そのような小惑星の検出には口径1メートルクラスの望遠鏡が必要でした。

JAXA研究開発部門が開発したソフトウエアによりこのような暗い小惑星まで35cm光学望遠鏡で検出できることが検証されました。



仮符号取得

これまでに、長野県入笠山に設置された口径35cm光学望遠鏡で取得した画像から、未知小惑星を336個発見して仮符号を取得しました。その中でも暗いものは22等級にもおよびます(2009年7月現在)。



小惑星番号の確定

仮符号を得た小惑星は、世界中の天文台で追観測が重ねられ、正確な軌道が求まった時点で、小惑星として認められ正式に番号登録されます。これらには早くても数年を要します。発見した小惑星の光度(等級)が暗い場合、追観測で捕らえることが難しくなりますので、行方不明になることが多々あります。また、過去の観測と同定されることで比較的早く番号登録となる場合もあります。


発見して軌道が確定した小惑星(2009/07/31現在)
小惑星番号 仮符号 発見日
(95165) 2002 AH180 2002/01/12
(143046) 2002 VR131 2002/11/05
(143047) 2002 VW131 2002/11/05
(170074) 2002 VC132 2002/11/05
(199287) 2006 BX54 2006/01/25
(204693) 2006 EM1 2006/03/02
(164473) 2006 EV1 2006/03/03
(204694) 2006 EL2 2006/03/03
(204699) 2006 EO45 2006/03/03
(164538) 2006 JC6 2006/05/02
(202648) 2006 JK42 2006/05/02
小惑星番号 仮符号 発見日
(187531) 2006 UM63 2006/10/20
(216273) 2006 WS127 2006/01/16
(187594) 2006 WA128 2006/11/24
(187595) 2006 WE128 2006/11/24
(185447) 2006 YT11 2006/11/18
(214860) 2006 YG12 2006/12/20
(188900) 2007 AL8 2007/01/10
(188901) 2007 AO8 2007/01/10
(187618) 2007 AM22 2007 01/14
(192160) 2007 BX28 2007/01/24
(202688) 2007 DN102 2007/02/21


移動天体検出ソフトウェア実用化

実用化した小惑星、彗星等を自動的に検出する移動天体検出ソフトの検出手順および機能は以下の通りです。


検索/確認



スカイとのしきい値を指定し、柔軟な探索が可能

  • 探索する天体の日々運動量を指定して、あらゆる方向に動く天体を発見できる(移動量は画像上の座標での指定も可能)。
  • メインベルト小惑星およびEKBOのモーションを自動的に計算して設定可能。
  • 探索ウィザードで、特定のモーションを持つ移動天体を手軽に探索できる。
  • ソフトウェアでビニングを行ない、画素数を減らして高速に探索可能。
  • 中央値から作成したマスク画像で移動しない恒星像を完全に除去して効率的に探索。
  • フラットフレームを生成して、フラット補正が不十分な画像でも傾斜かぶりの影響を受けることなく探索できる。
  • 画像を分割して読み込んで、メモリ使用量を節約可能。
  • 位置合わせ機能で、連続撮影中の視野ずれをキャンセル。



検出した像をブリンク表示して移動を確認

  • 重ね合わせた結果の天体像を表示可能。
  • 検出した像の広がりを判別して、星ではない点像を除去可能。
  • ピークのカウント値順に並んだ一覧から、天体像をブリンクで確認しながら、移動天体でない像を消去。



位置測定
GSC-ACTカタログで画像マッチングし位置を精測

標準装備のGSC-ACTカタログで画像マッチングを行ない、比較星を自動的に選択して天体の位置を精測します。
マッチングの後、画像の正確な視野中心、視野角、上方向の位置角、ピクセル分解能を表示します。

その他の主な機能は以下の通りです。

  • 残差が色分けされたマークで比較星の分布やマッチング精度を確認。
  • テキスト形式の外部ファイルから恒星データの読み込みが可能。
  • 検出像のFWHMから大きさを自動判別して光度を測定。
  • 比較星の残差と画像座標の一覧を参照可能。
  • 観測時刻と実際の時刻に差がある場合、秒数を指定して補正が可能。



軌道決定/同定
複数夜の観測から軌道を計算して天体を同定

複数夜の観測から軌道を計算し、同一天体を同定できます。
また、小惑星センターの小惑星チェッカーを呼び出して、既知天体と照合することが可能です。

その他の主な機能は以下の通りです。

  • 近日点軌道、放物線軌道、一般軌道からもっともフィットする軌道を自動的に判別。
  • アークが長くなると、全観測から軌道改良を行ない、軌道の精度をアップ。
  • 既知天体には、登録番号または仮符号を付与して、発見した天体と区別が可能。



星図表示/位置推算
星図上に天体を表示して位置やモーションの確認が可能

星図上に発見した移動天体と既知天体を表示して、位置やモーションの確認が可能です。
また、計算日時を指定して位置推算を行い、予報位置を表示することもできます。

その他の主な機能は以下の通りです。

  • 小惑星センターが日々更新する軌道要素をダウンロードして、番号登録済み、および仮符号が付与されたすべての既知天体を表示。
  • 既知天体の軌道要素を参照して、観測期間や出現回数から軌道の精度を把握。
  • マウスポインタの赤経・赤緯を表示し、天体の位置や視野を即座に確認できる。



追跡

  • 移動天体の星図表示と予報位置の計算で、追跡観測を支援。
  • 1夜の観測を延長して、位置推算が可能。
  • 複数夜の観測から求めた軌道で、位置推算が可能。
  • 2夜目3夜目のフォローアップ観測後、軌道決定同定を繰り返し、探索天体を絞り込む。



報告

  • 発見した移動天体には、パーソナルコードから天体名を自動的に付与。
  • 観測値は、ヘッダ付きのMPCフォーマットで出力され、ただちに報告が可能。
  • 移動観測用の天文台コード(247)用の2行フォーマットに対応。