研究紹介

大型構造物組立技術の研究

1GW(100万kW)級の大規模宇宙太陽光発電システム(SSPS)を想定した場合、高度36,000kmの静止軌道上に数kmに及ぶ宇宙構造物を構築する必要があります。

これまで、人類が構築した最大の宇宙構造物(2014年現在)は、高度約400kmで運用されている国際宇宙ステーション(ISS)で、その大きさ(幅)は約100m、質量は約340tです。ISSは、ロシアのプロトンロケット又はアメリカのスペースシャトルによる複数回の打上げで軌道投入されたモジュールを、宇宙飛行士によるロボットアームの操作などにより、軌道上で有人で組み立てることで建造されました。

1GW級の大規模SSPSを建造するには、複数回の打上げでモジュールを軌道投入し、軌道上で組み立てるという基本的な方針はISSと共通ですが、コストや安全性の面から有人で組み立てることが困難なため、完全無人での組立技術が必要と考えられます。ISSと比較してサイズが一桁大きいこと、軽量化の要求が一層厳しく、宇宙機の剛性を確保しにくいことなどから、大きな技術的チャレンジが必要です。



展開トラス組立技術


ISS搭載植生ライダー (MOLI)
マイクロ波Basicモデル
写真提供:J-spacesystems

SSPSには、構造、軌道、エネルギー伝送方式が異なる様々なコンセプトが存在しますが、特に大規模発電SSPSの場合、発電・送電部として大面積の平板構造物が必要となります。例えば、1GW級大規模SSPSのコンセプトのひとつに、私たちがマイクロ波Basicモデルと呼んでいるものがあります。多数の板状パネルが連結されて2km四方の一枚板の形状となっているものです。個々のパネルは太陽電池とマイクロ波変換回路、平板アンテナが組み込まれており、「発送電一体型パネル」と呼んでいます。

現在研究している「展開トラス組立技術」では、打上げ時に折り畳んだトラス構造物(発送電一体型パネルを搭載)を軌道上で展開、結合し、補給部材をランデブ・ドッキングして、同様の方法で規模を拡大するというシーケンスで平板構造物の無人組み立てを行います。
現段階では、100m級構造物の無人組立技術の確立を当面の目標として研究開発を進めています。


展開トラスによるSSPSの無人組み立て(イメージ)


地上実証実験

2012年には、展開トラス組立技術において最もクリティカルな展開トラス構造物の自動展開・結合機能の地上実証実験を行い、良好な結果を得ています。今後、補給部材のドッキングを含めたシーケンスでの実験を行う予定です。

展開トラス地上実証実験装置
展開トラス地上実証実験装置
100m級宇宙構造物の無人組立技術(展開トラス組立技術)を地上で確認するための実験装置です。展開トラスと組立装置(銀色)が、地上での重力キャンセル用の吊り具(青色の枠から吊り下げ)によって支えられています。


技術的課題への今後の取り組み

今後、大型構造物組立技術の分野で取り組みが必要な技術的課題には、以下のようなものがあります。また、並行して、既存技術を超えた新規の技術やアイデアを取り入れた組立技術の検討も行っていきます。

  • 組立中の形態維持、姿勢/軌道制御
  • 熱変形補償
  • 保守、解体