研究紹介

宇宙放射線防護に関する研究

宇宙放射線防護の意義と技術目標


■地磁気圏外:高線量率放射線環境
■将来有人探査ミッション:長期間(数百~1,000日間)


ISS宇宙飛行士の生涯実効線量制限値

宇宙初飛行の年齢 男性(mSv) 女性(mSv)
27 – 30 600 500
31 – 35 700 600
36 – 40 800 650
41 – 45 900 750
46 ≤ 1000 800

寄与がん死亡率が3%を超えないよう設定
(ISS搭乗宇宙飛行士被ばく管理規定)


技術目標
  • 被ばく線量を低減する技術の確立
  • 正確な被ばく線量予測
  • 線量予測のために適切な放射線環境モデルの構築
  • 適切な放射線モデルのために宇宙環境計測


  • 被ばく線量制限値の範囲内でのミッション遂行。
  • 幅広い年齢層の宇宙飛行士が安全に宇宙探査を行える。
  • 将来、人類が長期間宇宙での活動を行うことが可能となる。


宇宙放射線遮蔽材料の要求と課題

地磁気圏外における宇宙放射線環境

一次宇宙線

  • 銀河宇宙線(GCR):定常的に飛来
    陽子、a粒子、重核(Li~)(MeV/u~GeV/u)
  • 太陽粒子線(SEP):突発的に飛来
    大部分が陽子、発生時期・継続時間・フラックス・エネルギー分布の予測困難

二次宇宙線

  • 一次宇宙線と物質間の相互作用ならびに核反応により生成
  • 陽子、a粒子、中性子など

生体影響の大きい高LET(線エネルギー付与)放射線の線量を低減する手段が必要


遮蔽材料の設置(パッシブシールド)
  • 軽量かつ遮蔽効果の高い(単位質量あたり遮蔽効果が高い)ものが要求されている(ペイロードの重量制限)
  • 原子番号(Z)の小さい元素が有効(水素が最も有効)

水素(1H)
  1. 電荷質量比(Z/A)が最大
    ⇒静電相互作用による荷電粒子のエネルギー損失に有効
  2. 原子核質量が中性子質量と同程度、自身は中性子を持たない
    ⇒弾性散乱による二次中性子の減速に有効、中性子ビルドアップの抑制

  • ポリエチレン(PE, (CH2n)は水素重量濃度が高く(14wt%)、宇宙放射線遮蔽に有効
  • PEより単位質量あたりの遮蔽効果が高い材料に関する報告は殆どない

PEの効果的な設置もしくはPE以上に軽量かつ効果的な遮蔽は可能か?



研究内容

  • 放射線輸送計算により、下記を検討中
    ■宇宙放射線に対する各種材料の遮蔽性能の検証
    ■宇宙船内物品の設置位置・量による最適化
    ■全方位において船内線量を最小化する船壁厚の最適化
  • 月/火星面上での「実製造を視野に入れたレゴリス遮蔽材」の検討