研究紹介

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ホイール用軸受の研究

フライホイールの基本構造

人工衛星用のフライホイール(リアクションホイール、モーメンタムホイール)は、質量1~5kg前後のロータを6000rpm程度までの範囲で加減速または正逆回転して角運動量を変化させることにより、人工衛星等の宇宙機の姿勢を高精度に制御するためのアクチュエータです。 その構造は、ロータを軸受で支えているシンプルな構造であり、軸受の性能がフライホイールの精度や寿命に大きな影響を与えます。

本研究では、広い回転速度域で、低く安定した摩擦トルク、長寿命、低擾乱の軸受を実現するために必要な技術を構築することを目的にしています。 主要な研究内容として、軸受の寿命と摩擦トルクに悪影響を与える保持器不安定現象(リテーナインスタビリティ)を発生しない軸受を設計するための数値シミュレーション技術、グリース潤滑技術を利用した軸受の長寿命化技術の構築、および、 潤滑メカニズム解明と潤滑剤に関する基礎データ取得です。

成果の概要

軸受の動特性に関する数値シミュレーションの研究については、保持器などの表面粗さ、潤滑油の厚さ(油量)、保持器の弾性変形を考慮した数値解析が可能となっています。 また、数値解析に基づいて設計・製作した保持器が、実験的にも良好な安定性を持つことが確認されています。

共同研究

軸受の潤滑メカニズム解明や、潤滑油の特性データ取得などの基礎研究については、大学との共同研究により進め、以下のような成果が得られています。

  • 東京工業大学 中原・京極研究室
    軸受のIn-situ油量計測技術を開発し、摩擦トルク変動に対する油量変化の影響を明らかにしています。
  • 東京工業大学 益子研究室
    各種真空用液体潤滑剤の微少油量での摩擦摩耗特性を取得し、油量と寿命とが指数関数的な関係を持つことなどを明らかにしています。
  • 佐賀大学 大野研究室
    各種真空用液体潤滑剤の油、グリースでの軸受疲労寿命を評価し、各性状での特性を明らかにしています。
  • 東京理科大学 野口研究室
    高速軸受の滑り損傷メカニズムを解明するため、軸受予圧と公転滑り発生の関係などを明らかにしています。

まとめ

ホイール用軸受の数値シミュレーション技術は、保持器設計や動特性予測が可能なレベルまで向上し、品質工学(タグチメソッド)を応用することによる軸受最適設計手法を実機設計に役立てています。

また、軸受の潤滑メカニズムや寿命メカニズムの解明などの基礎研究も進め、これらの成果を国産フライホイールの高性能化に応用していく計画です。

発表論文等

  • 間庭和聡、野木高、小原新吾:宇宙用微量油潤滑玉軸受の長期摩擦トルク特性、トライボロジー会議 2013秋福岡 予稿集(2013-10)
  • Kazuaki Maniwa, Takashi Nogi, Kazuo Natori and Shingo Obara, Optimal Design of Ball Bearing Retainers for Space Applications Using Taguchi Method, International Tribology Conference Hiroshima 2011, Japan (2011)
  • Kazuaki Maniwa, Takashi Nogi, Kazuo Natori and Shingo Obara, Optimal Design of Ball Bearing Retainers Using Taguchi Methods and Bearing Dynamic Analysis, 14th European Space Mechanisms and Tribology Symposium 2011, Germany (2011-9) 67-72.
  • 間庭和聡、野木高、名取和雄、小原新吾:品質工学を利用した宇宙機器用軸受の保持器最適設計に関する研究、第41回信頼性・保全性シンポジウム発表報文集(2011)pp.289-294.
  • 間庭和聡、野木高、名取和雄、小原新吾:品質工学を利用した宇宙機器用軸受保持器の最適設計(第三報:保持器油量に対するロバスト性の評価)、トライボロジー会議 2011春 東京 予稿集(2011)pp.233-234.
  • 間庭和聡、野木高、小原新吾:軌道上におけるリアクションホイール用玉軸受の保持器挙動の数値シミュレーション、第41回流体力学講演会/航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム2009(2009-6)pp. 255-258.
  • 間庭和聡、野木高、小原新吾:数値シミュレーションによる宇宙機器用玉軸受の保持器不安定現象に関する研究、第17回スペース・エンジニアリング・コンファレンス(2009-1)pp. 45-48.
  • 野木高、間庭和聡、小原新吾:宇宙用微量油潤滑玉軸受の動特性解析、トライボロジー会議 2008春 東京 予稿集(2008-5)pp. 145-146.
  • 間庭和聡、野木高、小原新吾:宇宙用油潤滑玉軸受の保持器と外輪案内面における摩擦特性、トライボロジー会議 2008春 東京 予稿集(2008-5)pp. 147-148.
  • 間庭和聡、野木高、小原新吾:宇宙用油潤滑玉軸受の保持器接触部における混合潤滑解析、トライボロジー会議 2007秋 佐賀 予稿集(2007-9)pp. 177-178.
  • 野木高、小原新吾:宇宙機器用玉軸受の動特性解析、トライボロジー会議 2006春 東京 予稿集(2006) pp.301-302.

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