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熱機能付加構造部材の研究

観測衛星では望遠鏡などを非常に低い温度に保つことで、観測精度を向上することができます。そのため、望遠鏡を支える構造部材には、できるだけ外から熱が伝わらないような工夫をする必要があります。 本研究では、構造部材の全長を変えずに、熱の伝わる距離を長くするような構造にすることで、熱の影響を軽減する機能を付加した構造部材の研究に取り組んでいます。

研究の概要

近年の観測衛星、特にX線や赤外線による天文観測を行う衛星では、観測精度を向上するために搭載されている望遠鏡などの観測機器を非常に低い温度に保つことが必要とされています。 そのため、冷凍機などを使うことにより、観測機器周辺に極低温と呼ばれる非常に低温な環境を作り出しています。したがって、その観測機器を支える構造部材にも外部からの熱を伝わりにくくするような工夫が必要となってきます。

同じ材料であれば、暖かい物(熱源)からの距離が長くなるほど熱は伝わりにくくなります。そのため、構造部材も長ければ長いほど熱が伝わりにくくなりますが、人工衛星のサイズが大きくなってしまい、ロケットに入らないなどの問題が出てきてしまいます。 そこで、パイプ形状の構造部材を端で折り返していくことで、構造部材の全長は変えずに熱の伝わる距離を長くする構造が可能となります。

極低温断熱3重管構造の概念図
極低温断熱3重管構造の断面模式図

研究成果(より詳細な研究内容)

次期赤外線天文衛星「SPICA」の断熱構造部材(トラス部材)を想定した極低温用断熱3重管トラスの研究を行っています。

極低温の環境下での熱の移動は、熱伝導が支配的となります。そこでSPICAでのトラス部材の使用想定温度域である4K~30K(絶対温度)にて低熱伝導の特性を示し、支持構造部材として高剛性で高強度な CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)をパイプ材料として使用しています。極低温における複合材構造設計は非常に難しく、熱設計も絡めた設計技術は確立していません。 そのため、この3重管トラス部材について、極低温での熱伝導の試験技術及び熱設計の設計検証を行うための熱試験を実施しました。

その結果、4K~30Kの温度領域における部材レベルの熱伝導度を評価する技術を確立することができ、断熱性能についてもほぼ想定に近い値を確認することができました。

現在、さらなる熱伝導度計測データの蓄積や広い温度範囲での適用を検討するための試験を行っています。そのほか、3重管トラスにおけるCFRPパイプと端部の金属フィッティングの継手構造について、 現状は接着構造による異種材料の接合を行っていますが、さらに継手強度を向上するために接合方法の改良も行っています。

極低温断熱3重管トラス部材
継手構造の改良のためのX線CTによる非破壊検査

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