研究紹介

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宇宙用先端材料の研究

「材料の研究」は、ロケット、人工衛星、「きぼう」(JEM)等の各プロジェクトに必要な材料技術の向上、蓄積を図ると共に、その成果を各プロジェクト等に適切に、積極的に反映していくことを目的として、体系的に実施しています。

研究の概要

(1)先端材料の評価

宇宙用先端材料である耐原子状酸素性塗料について、照射試験前後での熱光学特性・密着性等の評価を行いました。照射試験としては、真空複合環境試験設備を使用した原子状酸素照射および電子線照射を実施しました。

(2)材料の耐宇宙環境性評価

宇宙用材料の耐宇宙環境性評価技術の向上を目的として、日本原子力研究所(以下、原研と略す)との新たな3年間の共同研究を開始しました。原研のイオン照射設備によるイオン照射試験および真空複合環境試験設備による電子線照射を実施しました。 照射試験前後の供試体の熱光学特性データを評価しました。また、電子線照射試料については物理・化学的手法を用いた材料分析を実施しました。

耐原子状酸素コーティングの開発

国際宇宙ステーションや地球観測衛星等が飛行する地球低軌道環境には、原子状酸素が多く存在し、同環境における材料劣化の主要因となっています。この原子状酸素からの材料保護を目的に、耐原子状酸素コーティングの開発を行っています。

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(3)放出ガスによる汚染の研究

ロケット、人工衛星および「きぼう」(JEM)等の各プロジェクト支援を含む、ASTM E595アウトガスデータ(TML、CVCM、WVR)の取得を行いました。また、昨年度JEMプロジェクトチームと連携して整備した、ASTM E1559準拠のアウトガスレート測定装置の性能確認および 放出ガス発生レート、コンタミネーション等の評価を行いました。

(4)材料データベースシステムの運用

「材料の研究」等を通して取得した各種試験データを収集・蓄積して各プロジェクトでの有効利用を図るため、前年度に引続き、材料評価データ(熱光学特性 データ)・アウトガスデータおよび安全性実証試験データの登録作業を行いました。 また、データベースのセキュリティ確保のために改修を実施しました。併せて、継続性・発展性確保のためのハードウェア・ソフトウェアの改善案を検討しました。

(5)軽量構体パネル材料の研究(その1)

宇宙機構体の軽量化と低コスト化を目的とし、スキン材をCFRP、コア材を低密度高分子発泡材とするサンドイッチ構造の軽量構体パネルの設計・試作・評価試験を行いました。 評価試験としては、CFRPの引張・圧縮試験、軽量構体パネルの曲げ試験、アウトガス特性評価試験、耐電子線性評価等を実施しました。

成果の概要

先端材料の評価
3D/BMI樹脂の断面観察図
原子状酸素照射前後の塗料の電子顕微鏡写真

耐原子状酸素性白色塗料として、JAXAのプロジェクトで使用実績のあるZ-93P(IITRI社製)は、機系のバインダを使用しているため密着性に劣るという問題点があることが知られています。 そこで、NODE1(UNITY)の曝露部塗料として使用実績のあるAZテクノロジ社製耐原子状酸素性塗料(白色(品名AZ-93)、黒色(同ML-210IB)、赤色(同AMJ-600IR)、青色(同AMJ-700IBU)および 黄色(同TMS- 800IY))に着目し、各種評価を進めてきました。その後、原子状酸素・電子線照射における熱光学特性と密着性(ASTM D3359準拠)の変化、および原子状酸素による塗料表面への影響を評価しました。

原子状酸素照射による太陽光吸収率の変化を右上図に示します。AZ-93はZ-93Pと比較し、照射初期では差異は大きくないが、照射量が1020atoms/cm2以上で悪化することが判明しました。なお、垂直赤外放射率はいずれも殆ど変化がありませんでした。照射前の密着性は両試料とも4Aレベルですが、原子状酸素照射後は3Aを示したAZ-93の方が優れていました(Z-93Pは2A)。

原子状酸素照射によりAZ-93の太陽光吸収率が著しく悪化した原因を探るため、走査型電子顕微鏡で表面観察を行い、X線分析装置で表面元素の分布状態を解析しました。顕微鏡写真を右下図に、元素分布解析結果を表1に示します。 このことから、AZ-93はZ-93Pに比べ、原子状酸素によるエロージョンを受けやすいことが判明しました。

なお、本測定においては、供試体を大気中で保管していたため、その影響を考慮する必要があります。

また、別途実施した原子状酸素(1.7×1020atoms/cm2)と電子線(2.0×1016particles/cm2)の順次照射試験の結果、電子線によっても若干のダメージを受けることが判明しました。

表1:元素分布解析結果(at%)

  AZ-93 A-93P
  未照射 照射後 未照射 照射後
B 73.6 51.3 77.2 71.9
O 18.9 31.1 15.3 19.0
Zn 6.0 15.6 6.9 8.4
Si 0.5 1.4 0.4 0.4
k 0.5 0.6 0.2 0.3
材料の耐宇宙環境性評価

1994年度から1995年度にかけての原研との共同研究「宇宙用電線材料・熱制御材料の耐放射線性の研究」において、各種宇宙用材料に放射線(電子線、陽子線、鉄イオン等)・紫外線・原子状酸素の単独および複合(順次)照射を実施し、 材料の特性変化の測定および材料分析を行いました。その結果、1)複合照射による相乗効果の重要性が確認されました。また、ADEOS事故を契機として、2)宇宙環境曝露による材料特性変化への張力負荷の影響評価が課題になりました。

宇宙用として有望な新規国産材料を対象として、原研との間で、1)、2)を視野に入れた共同研究「宇宙用高分子材料の耐複合環境性評価」(1998、1999年度)を実施し、原研とJAXAの設備を活用した研究を開始しました。

上記の研究を深めるため、2000年度から2002年度に亘る、原研との共同研究「宇宙用高分子材料の耐複合環境性評価(II)」を締結しました。本年度の共同研究においては、原研でのイオン照射およびJAXA研究開発部門の真空複合環境試験設備による、 電子線の照射を分担して行っています。電子線照射試料については、物理・化学的評価を行い、劣化の状況把握とメカニズムの解明を試みています。

材料加熱時のセンサ挙動例 PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)
実験

耐原子状酸素性及び耐放射線性向上を狙いとした新規国産材料のうち、今年度対象とした供試体を表2に示します。イオン照射においては、陽子線(H+)に次いで静止軌道上での存在量が多いヘリウムイオン(He+)・酸素イオン(O+)を選択しました。 加速エネルギは、H+:10MeV、He+、O+:1MeVとしました。各イオン種とも、静止軌道上10年間のフルエンス(H+:2E11[cm-2]、He+: 6.6E9[cm-2]、O+:2.0E8[cm-2])を基準にし、H+では1~100年分、He+では10~100,000年分、 O+では300~3,000,000年分の照射を実施しました。電子線照射(設定出力:200keV、2mA)では、国際宇宙ステーションの軌道上(高度407km)で約25年分に相当するフルエンス(8.37×1013e/cm2)としました。

表2:今年度対象とした供試体

試料名 組成
PI2 ポリイミド:UPILEX-R表面に厚さ約3000nmのポリイミドシロキサン系膜を形成
PI6 ポリイミド:UPILEX-R(BPDA-ODA)標準品、厚さ0.05mm
PI7 ポリイミド:UPILEX-S(BPDA-PDA)標準品、厚さ0.05mm
X-PTFE テフロン:架橋テフロン、厚さ約0.5mm
PTFE テフロン:テフロン標準品、厚さ約0.5mm

供試体
BPDA-ODA: [biphenyl tetracarboxylic dianhydride]-[4,4'oxydianiline]
BPDA-PDA: [biphenyl tetracarboxylic dianhydride]-[paraphenylenediamine]
PTFE: polytetrafluoroethylene

各供試体とも照射前後での熱光学特性(太陽光吸収率:αS、垂直赤外放射率:εN)を評価しました。電子線照射を行った供試体については、顕微鏡観察、透過電子顕微鏡観察、エリプソメトリ、X線光電子分光法、フーリエ変換赤外分光分析、 19F固体高分解能核磁気共鳴分析、薄膜硬度測定(表面μm層の硬度測定)、ナノインデンテーション(極表面nm層の硬度測定)等により材料特性変化を解析しました。

結果

1)イオン照射試料

図3(a)にO+フルエンスに対する太陽光吸収率(αS)を示します。また図3(b)に垂直赤外放射率(εN)を示します。いずれも今回のフルエンスの範囲において、ほとんど変化が認められませんでした。 He+、O+を照射した供試体についても同様であり、今回検討した供試体はいずれも、単独のH+、He+、O+各イオン照射に対して実用レベルで安定した熱光学特性を発揮することがわかりました。

図3(a) O+(1MeV)照射量に対する
海洋高吸収率(a8)の変化
図3(b) O+(1MeV)照射量に対する
海洋高吸収率(εN)の変化

2)電子線照射試料

(A)ポリイミドフィルム

薄膜硬度測定の結果、電子線照射したPI6の押し込み深さが照射前と比較して深くなり(材料が軟化する)、構造変化に起因する物性値変化が生じた可能性が示唆されました(図4)。 しかし、ナノインデンテーションによる圧痕深さは照射前後で変化が見られません(図5)。その理由として、内部(μmオーダの深さ)と極表面(nmオーダの深さ)では電子線の影響が異なるか、分析のために電子線照射後に大気と接触させたことにより 軟化した極表面が再硬化した可能性等が挙げられます。

一方、PI2では薄膜硬度測定における電子線照射前の押し込み深さはPI6の1/6(約0.4μm)であり、表面に形成したポリイミドシロキサン系膜の硬度を反映しているものと考えられます。 電子線照射前後の押し込み深さおよび官能基量に変化は観察されず、PI6と比較して電子線照射に対して安定であることがわかりました。またPI7に関しては、電子線照射前後で明確な変化は認められませんでした。

ポリイミドの分解機構について詳細な検討が必要ではありますが、今回検討したポリイミドフィルムの耐宇宙環境(耐電子線)性は次の序列になると考えられます:PI2≧PI7>PI6。

ただし、真空中での電子線照射による表面構造変化を正確に知るためには、表面汚染を避けて照射直後に真空環境下で観察することが必要であり、これらの計測環境整備・運転は今後の課題です。

図4 PI6の電子線照射と押し込みの深さの関係
図5 電子線照射PI6のナノインデンテーション
押し込み圧と圧痕深さの関係

(B)テフロンシート

X-PTFEおよびPTFEに対する薄膜硬度測定の結果、電子線未照射での押し込み深さはX-PTFEの方がPTFEと比較して大きく、電子線照射後にはPTFEの押し込み深さに変化は見られなかったものの、 X-PTFEでは約7%減少しました。電子線照射によるPTFEの結晶構造および化学構造の変化は、電子線照射時における雰囲気ガスの種類と有無、試料温度、線質(エネルギや線量率)の違いに起因することが知られています。 X-PTFEはPTFEを真空下で融点付近(613K)に加熱した状態で電子線を照射して製造されます。この製造プロセスでは、分子鎖間で架橋・非晶化が進行してテフロンシートは軟化します。しかし室温での電子線照射では架橋反応は進行せず、 逆に分子鎖切断などの反応により結晶化が促進され硬化します。本研究の場合、電子線照射(45kGy)により分子鎖切断が促進され、X-PTFEの結晶化に伴う薄膜硬度測定の押し込み深さの減少として観察されたものと思われます。

一方、19F固体高分解能核磁気共鳴分析等による解析結果では、電子線照射による化学構造変化はX-PTFE、PTFE共に検出限界以下でありました。電子線による吸収線量は、表面近傍での勾配が最も高くなります。 今回の照射条件における電子線の進入深さは0.116mmであるので、厚さ0.5mmのテフロンシート全体の約20%程度しか影響を受けていないことが理由としてあげられます。また、表面分析手法にとっては変化層の厚みは十分なものの、 検出限界以下の構造変化しか生じなかった等の理由が考えられます。

今後は、各プロジェクトに反映できるデータを取得すると共に、真空複合環境試験設備を用いた原子状酸素・電子線・紫外線の順次/複合照射による耐宇宙環境性の向上や、 張力負荷下での材料特性変化に着目した研究を行い、新規宇宙用材料の開発に反映したいと考えています。また、国際宇宙ステーションにおけるサービスモジュールおよび「きぼう」を利用した材料曝露実験 (MPAC&SEED:Micro-Particles Capturer and Space Environment Exposure Device)と連携して研究を進める予定です。

放出ガスによる汚染の研究

宇宙機においては、材料からの放出ガスなどによる軌道上外部汚染が深刻な問題になっています。特に、太陽電池パネル・ラジエータ・光学センサなどは、汚染物付着によって、光学特性変化に伴う機能劣化あるいは寿命短縮に陥ります。 従来は、ASTME595による再凝縮物質量比(CVCM)、質量損失比(TML)測定結果から材料の使用可否を判断してきました。これらは、一定時間(24時間)の重量変化量のみが評価の対象であり、変化率を評価していません。 近年、アウトガスの時間変化率(アウトガスレート)も重要なパラメータであることが認識されており、昨年度、国際宇宙ステーションプロジェクトにおける要求事項であるASTME1559に準拠したアウトガスレート試験装置をJEMプロジェクトチームと連携して整備しました。 今年度は、本試験装置の性能確認試験および外部汚染懸念材料の評価を行いました。

性能確認試験の結果、試験チャンバ自身によるコンタミネーションが試験結果に予想以上に重大な影響を与えることが判明したため、その対策を施しました。その後、JEMプロジェクトあるいはJEM曝露部ペイロードに係るプロジェクトの支援を目的として、 9種類の外部汚染懸念材料の評価データを取得しました。取得データの例を下図に示します。


シリコーン系ポッティング剤KE101A/Bのアウトガスレート試験結果

今後もJEM曝露部候補材料等の評価を進めるとともに、他機関(海外)とのラウンドロビン測定を実施する予定です。また、人工衛星および宇宙ステーション曝露部に関するコンタミネーション解析について検討を進めています。

材料データベースシステムの運用

材料データベース(以下、材料DBという)は、1997年度から、登録済みの利用者に対し1)アウトガスデータのJAXA内外への公開、2)安全性実証データのJAXA内への公開を開始しました。1999年度には機能拡充を実施し、1)、2)に加え、 3)材料評価データ(熱光学特性データなど)および4)宇宙実証データと各データの日本語版・英語版の整備を行い、JAXA内外への一般公開(利用者登録制度は廃止)を行いました。

2000年度は、新規取得データの登録を継続しました。一方、ハッカの出現等の社会環境に対応したJAXAのセキュリティ基準見直しを受け、年度当初にセキュリティ強化を実施しました。一方、現計算機設備は1996年の整備時期からのものであり、 静止画や動画のデータの取扱い等を含めたデータベース技術の進歩、より高度なセキュリティの向上およびユーザへの便宜の点からすると旧式です。したがって、計算機設備の更新およびそれによってもたらされる材料DBのセキュリティ維持とユーザの活用利便性を実現するために、 「2000年度材料データベースシステムの機能拡張(1)」および「同(2)」により、「新規計算機設備の機能」、「セキュリティ」、「登録機能」、「公開機能」などについて概念設計作業を実施しました。

材料データベース

軽量構体パネル材料の研究(その1)

現在、宇宙機の構体パネルは軽量化のためにCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)またはAlのスキン材と、Alハニカムコア材からなるサンドイッチパネルが用いられていますが、さらなる軽量化と低コスト化を目指して、 CFRPスキン材と低密度高分子発泡材であるロハセルコアによるサンドイッチパネル(以下、軽量構体パネルと呼ぶ)について設計・試作・特性評価試験を実施し、その宇宙への適用可能性を調査しました。

従来のサンドイッチパネルが接着剤によりスキン材とコア材を接合することで作製されるのに対し、本軽量構体パネルは接着剤を用いない真空成形(バキュームバッグ成形)により作製されるため、接着剤重量分の軽量化実現の他、 工程の高精度管理や簡略化による低コスト性、高信頼性の確保が期待できます。

軽量構体パネルの設計解析結果を下図に示します。

等価剛性をもつ各種サンドイッチパネルの単位面積当りの重量比較

図は、軽量構体パネル(CF/ロハセル)を含む4種類のサンドイッチパネルの単位面積当りの重量を比較したものであり、Al板の等価曲げ剛性厚さに対して表示しています。軽量構体パネルはAl板13mm厚相当までの曲げ剛性条件では最軽量であり、 Al板13mm厚から27mm厚の範囲でも、CFRPスキン材-CFRPハニカムコア材(CF/CFハニカム)のサンドイッチパネルに次いで軽量です。しかし、CF/CFハニカムのサンドイッチパネルはその高コスト性から宇宙機への適用において躊躇せざるを得ません。 したがって、Al板27mm厚までの曲げ剛性条件では、本軽量構体パネルが、宇宙機の一層の軽量化をもたらすと期待されます。

軽量構体パネルの耐宇宙環境性を評価するため、日本原子力研究所にて、CFRPスキン材およびロハセルに対して静止軌道10年相当の電子線照射試験を実施しました。実際の適用環境におけるCFRPの電子線の遮蔽効果も考慮すると、 電子線に対する耐性は良好であることが判明しました。また、熱光学特性やアウトガス特性の評価結果等も、良好なものでありました。さらに、構体モデルにおける一層の軽量化を目指したアイソグリッド構造の付加や、通常用いられるインサート材を使用しない CFRPアングル部材によるパネル接合方式を考案した上で、耐電子線性評価や引張強度等のデータを取得しました。

今後は、原子状酸素や紫外線に対する耐宇宙環境性、耐熱サイクル性、耐打上げ環境性の評価を行う他、強度および耐電子線性を考慮したパネル設計手法の確立、パネル同士や搭載物の接合評価、軽量構体パネルの品質確保のための検査手法、 評価方法等について検討する予定です。

まとめ
  • 先端材料の評価では、耐原子状酸素性塗料として無機系のバインダを使用した塗料(AZテクノロジ社:白・黒・赤・青・黄、IITRI社:白)を中心 にして、原子状酸素照射・電子線照射前後の基本性能(熱光学特性・密着性)を評価しました。 その結果、全般的にはAZテクノロジ社の塗料が優れた特性を示すことがわかりました。しかし、白色塗料の耐原子状酸素性については、太陽光吸収率の変化で判断する限り、IITRI社Z-93Pの方が、AZ社AZ-93よりも優れていることが判明しました。
  • 材料の耐宇宙環境性評価では、耐原子状酸素性向上型および耐放射線性向上型の新規国産材料に対して、原研のイオン照射施設によるイオン照射および、JAXA総合技術研究本部の真空複合環境試験設備による電子線照射を実施しました。 熱光学特性を評価した結果、今回の各単独照射については、良好な耐性を有することが判明しました。電子線照射供試体については、物理・化学的手法による構造変化の解析も実施しました。
  • 放出ガスによる汚染の研究では、ロケット、人工衛星およびきぼう(JEM)等のプロジェクト支援を継続しました。特に、アウトガスレート測定試験に関して、装置の性能確認を行い、JEM曝露部候補材料の評価を実施しました。
  • 材料データベースシステムの運用では、セキュリティ改修を実施し、アウトガスデータ・安全性実証データ・材料評価データの日本語版・英語版データの新たな登録を行いました。また、セキュリティと効率的運用のさらなる向上のために、 新規ソフトウェア・ハードウェアに関する設計等を検討しました。
  • 軽量構体パネル材料の研究(その1)では、CFRPスキン材-低密度高分子発泡材による軽量構体パネルの設計・試作・評価試験を行いました。設計解析の結果、本軽量構体パネルが宇宙機の軽量化に有効であることが明らかになりました。 試作・評価試験についても良好な結果が得られました。

2001年度は、本年度の成果を踏まえ、耐宇宙環境性のより詳細な検討を実施し、各プロジェクトに反映できる成果の取得と評価技術の向上を目指して、「材料の研究」を継続しています。

特に、2000年度から本格的に開始した軽量構体パネル材料の研究および形状記憶ポリマの研究を深める予定です。

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