低衝撃保持解放機構の開発
「100Gsrs以下の超低衝撃かつリセッタブル」な保持解放機構技術により、人工衛星搭載機器の衝撃環境を大幅緩和します。衛星の製造・試験コストが低下し、設計自由度が拡大します。

研究の概要
人工衛星は小さく畳んでロケットに積み、軌道投入後に様々な部品を展開します。今までは火薬を使った分離装置(火工品)が広く使われていましたが、作動時の衝撃が大きく、搭載する機器の設計や検証にコストがかかっていました。 形状記憶合金を用いることで衝撃がほとんど発生しない分離装置「低衝撃保持解放機構(Low Shock Release Devise:LSRD)」を三菱電機株式会社と共同で開発しました。
低衝撃保持解放機構を用いることで以下のメリットがあります。
衛星の小型化
- 衝撃が小さくなるため、衝撃に弱い機器を自由に高密度に配置でき、衛星の小型化に貢献します。
コスト低減
- 耐衝撃設計にかかる設計や試験のコストが削減できます。
- リセッタブルなため消耗品費が削減(火工品は試験毎に使い捨て)できます。
- さらに、火薬を使わないため安全であり管理コストも低下します。
設計自由度の拡大
- 衝撃に弱い材料も使用可能になり、機器設計の幅が広がります。

研究成果(より詳細な研究内容)
低衝撃性能と効果見積り

従来品を大きく凌駕する、100Gsrs以下を実現しました。(図1)
これにより、事前の衝撃試験が大幅に省略できる可能性があります。(図2)

*太陽電池パドルの例
*NASA-STD-7003A、PYROSHOCK TEST CRITERIAより下記の衝撃減衰式を参照。
JERG-2-130-HB001、衝撃試験ハンドブックより衝撃試験の省略方法を参照。
主要諸元
寸法 | Φ50mm×43mm以下 |
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質量 | 350g以下 |
保持荷重 | 10kN(1020kgf)以下 |
分離衝撃 | 100Gsrs以下 |
温度範囲 | -55(-80)~+60℃ |
再使用回数 | 20回(その場で再セット可能) |
コンポーネントカタログ:低衝撃保持解放機構(LSRD-10K/C-2000)
発表論文等
- 宮馬浩、小原新吾、鈴木峰男、中川潤、松井崇雄、岩田理:「低衝撃保持解放機構の開発」、第51回宇宙科学技術連合講演会, (2007) 1F17
- 宮馬浩、小原新吾、高畑博樹、中川潤、大和光輝、松井崇雄:「SLATS太陽電池パドル用低衝撃保持解放機構の概要」、第56回宇宙科学技術連合講演会, (2012) 3D07