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マイクロ波無線エネルギー伝送技術の研究

10cm~0.1mm程度の波長(周波数0.1GHz~100GHz程度)の電磁波の一種で、通信用電波としても広く利用されているマイクロ波ですが、エネルギー(電力)を伝送する手段として利用する場合は、非常に多くのアンテナ素子で構成されるアレーアンテナを用います。アレーを構成する各アンテナ素子からマイクロ波を放射するタイミング等(位相と振幅)を制御し、空間で合成することで、任意のビーム形状を形成することができ、さらにビームを任意の方向に向けて放射(送電)することができます。その特質を活かし、宇宙空間において太陽光での発電を行い、その電力をマイクロ波に変換してエネルギーとして地球へ伝送し、地上にてマイクロ波を電力に変換して利用に供するシステムを、マイクロ波方式宇宙太陽光発電システム(M-SSPS)と呼んでいます。

 

エネルギー伝送手段としてのマイクロ波の特徴

 

高精度マイクロ波ビーム方向制御技術の研究開発

SSPS研究チームでは、マイクロ波を用いた高精度なビーム方向制御の研究開発に注力しています。地上における供給電力が1GW(100万kW)級の大規模SSPSを想定し、高度36,000kmの静止軌道から地上受電部(想定直径2km)へマイクロ波エネルギーを安全かつ効率よく伝送するため、軌道上でkmサイズに及ぶ巨大アンテナ(フェーズドアレーアンテナ)を用いて、0.001度のビーム方向制御精度(距離36,000km先で数百m程度の精度)を達成する必要があります。

また、軌道上の巨大アンテナ面には数十億オーダーの個数のアンテナ素子を基準位置が揃った状態で配置するのですが、これ程まで大きなサイズになるとアンテナ面が変形し、構造的に完全な平面を保てないため、個々のアンテナの方向(基準位置)が変動してしまうことは避けられません。マイクロ波のビーム方向を極めて高精度に電気的に制御するにあたっては、これを踏まえた電子的な補正制御が必要となるのです。

以上のことから、将来の宇宙利用を念頭においた高精度のビーム方向制御方式として、①受電設備から軌道上の送電アンテナに向けて「マイクロ波の送電方向を示すパイロット信号」を送り、②振幅モノパルス方式によりパイロット信号の到来角方向を送電アンテナの位置において高精度に検出して、③当該方向にマイクロ波を送電するようマイクロ波の位相を制御する、「ソフトウェアレトロディレクティブ方式」を採用しています。また、マイクロ波の位相制御に際しては、地上における受電電力が最大になるよう、地上受電部でのマイクロ波の受電強度測定結果を基にして、素子電界ベクトル回転法(REV法)を用いた制御も行います。『振幅モノパルス法』と『REV法』、これらの手法を取り入れた独自の制御方式、制御アルゴリズムについて研究開発を進めています。

マイクロ波ビーム方向制御方式(振幅モノパルス法とREV法の適用)

マイクロ波ビーム方向制御方式(振幅モノパルス法とREV法を組合せたソフトウェアレトロディレクティブ方式)
 

マイクロ波無線電力伝送地上試験

SSPS研究チームは、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(J-spacesystems)との連携協力の下、マイクロ波無線電力伝送地上試験を2014年度に実施しました。マイクロ波無線電力伝送地上試験システム(概略図参照)を製作し、JAXAは、マイクロ波無線電力伝送地上試験システムにおいて、「ビーム方向制御部」の開発を担当しました。軌道上の大規模SSPSにおける熱や重力傾斜トルクによる巨大アンテナ面の変形を模擬した状態で、その変形を電子的に補正し、5.8GHz帯のkW級高出力マイクロ波ビームを所望の方向に高精度で指向制御できることを伝送距離10mの屋内(電波暗室)において評価しました。その結果、ビーム方向制御の目標精度0.5度rmsに対して0.15度rmsを確認し、試験目標を達成しました。また、屋外においてもマイクロ波による無線電力伝送試験(伝送距離約55m)を実施し、無線送電した電力を実負荷に供給して、ユーザに実際に使用していただく実用化実証(デモンストレーション)を実施しました。

マイクロ波無線電力伝送地上試験システムの概略図

マイクロ波無線電力伝送地上試験システムの概略図
 

技術的課題への今後の取り組み

今後、マイクロ波無線エネルギー伝送技術の分野で取り組みが必要な主な技術的課題として、以下が挙げられます。