研究紹介

紫外線防護

背景

人工衛星、宇宙ステーション、ロケット等(まとめて宇宙機)を紫外線から守る為、宇宙空間における材料の耐紫外線性評価技術の研究をしています。

一般的に高分子材料は紫外線が当たることで着色(黄変)します。宇宙空間では、地上では大気により弱められる300nm以下の紫外線も存在しています。そして、水や酸素が有りませんので、環境が地上と大きく異なります。

紫外線(Ultra violet, UV) 紫外線波長域:200~400nm。地上では大気により弱められる300nm以下のUVも宇宙空間では存在しています。

大気圏外(AM0)と地上(AM1.5)の太陽光スペクトル
大気圏外(AM0)と地上(AM1.5)の太陽光スペクトル

<出典>
ASTM E490-00a, Standard Solar Constant and Zero Air Mass Solar Spectral Irradiance Tables
ASTM G173-03, Standard Tables for Reference Solar Spectral Irradiance: Direct Normal and Hemispherical on 37° Tilted Surface



保有している技術
  • 宇宙空間を模擬した紫外線照射技術(紫外線照射強度:軌道上等倍~30倍、試料制御温度:室温~200℃)
  • 黄変度合いの定量評価指標と測定装置(指標:太陽光吸収率(Solar Absorptance)、測定装置:太陽光吸収率測定装置)


紫外線照射の評価例

紫外線照射の評価例

<出典>
Junichiro Ishizawa and Kazuyuki Mori, “Space Environment Effects on Cross-Linked ETFE Polymer,” Proc. 11th International Symposium on Materials in a Space Environment, CD-ROM, 2009.



課題と技術目標

近年、宇宙機の設計寿命が長くなる一方、開発期間は短くなっています。そのため、各種の評価時間短縮が必要となっています。

紫外線による太陽光吸収率の増加は線形ではありません。ある一定値へと漸近する経験的な曲線であっても初期の劣化から長期の劣化を予測することは難しいです。その理由としては、材料ごとの劣化メカニズムが明らかになっておらず、理論的考察から劣化挙動を議論していないためです。
また、少ない照射量から単純に外挿したのでは、EOLにおける設計予測値に不確定性が多く、宇宙機の設計に過剰なマージンを要求することになります。
そのため、評価時間短縮の一方策として、少ない照射量から長期の劣化を予測する技術を構築する必要があります。

また未解決な課題の一つとして、真空紫外線(200nm以下の光)の影響があります。



技術目標
  • 少ない照射量および劣化メカニズムの観点から設計寿命末期(EOL:End Of Life)の性能を見積る劣化予測技術
  • 紫外線と真空紫外線同時照射による、軌道上模擬試験技術


研究内容

  • 劣化メカニズムの評価
    ■照射量依存性の要因絞り込み
    ■温度依存性の要因絞り込み
  • 予測式の検討
  • 紫外線と真空紫外線の同時照射試験技術整備
    ■紫外線と真空紫外線の定量照射技術
    ■試料温度の制御技術