研究紹介

宇宙環境計測ミッション装置(SEDA-AP)

SEDA-AP(Space Environment Data Acquisitionequipment-Attached Payload)は国際宇宙ステーションが周回する軌道の宇宙環境を計測すると共に、有人宇宙活動を支えます。

SEDA-APは、スペースシャトルで打ち上げられ、JEM曝露部上で宇宙環境データの計測を行います。

この装置は、補給部曝露区、ロボットアーム、曝露部とのインターフェイスを受け持つ共通バス機器部、中性子モニタセンサを宇宙空間に伸展させる伸展機構部、そして各種宇宙環境データの計測を行うセンサ、計測装置より構成されています。



ミッションの意義

本ミッションにより取得する宇宙環境計測データを、過去の計測データと統合することで、宇宙用材料の劣化特性や電子部品の劣化・誤動作等に関するデータと対比可能な宇宙機器設計の基礎データが得られます。この基礎データは、関連する科学研究や国際宇宙ステーションの運用および、宇宙天気予報にも有用となります。

宇宙環境計測データは、研究所、大学、JEM実験ユーザ等の産学官ユーザにより、宇宙運用、工学分野、科学研究分野等において広く利用されます。

現在までに計測してきた宇宙環境(高エネルギー粒子、銀河宇宙線、原子状酸素、プラズマ、磁場等)とそれらによる影響(シングルイベント、太陽電池の劣化、トータルドーズ、帯電現象、熱制御材の劣化等)に関するデータとモデルは、宇宙環境データベース(SEES)として公開しています。本宇宙環境計測によって得られるデータも、SEESにより公開しています。




計測装置の概要及びその計測原理

中性子モニタ(NEM)
STS-89搭載ボナー球検出器で計測された中性子の世界マップ
STS-89搭載ボナー球検出器で
計測された中性子の世界マップ

シンチレーションファイバ検出器研究試作モデル
シンチレーションファイバ検出器
研究試作モデル

中性子は、電気的に中性なため透過力が強く、非常に有害な放射線です。中性子モニタは、熱中性子~100MeVまでの中性子を、ボナー球型検出器とシンチレーションファイバ型検出器により、リアルタイムで計測します。


ボナー球型検出器は、熱中性子に対し高い感度を持つ3He比例計数管を用いて中性子をその他の荷電粒子と弁別し、またポリエチレン減速材の厚さによる応答関数の違いを利用して中性子のエネルギーを計測するものです。


シンチレーションファイバ検出器は、合計512本の棒状シンチレータを積層して構成した立方体センサにより入射した粒子の飛跡を求め、飛跡の違いから中性子を弁別するとともに、飛跡の長さからエネルギーを計測します。



重イオン計測装置(HIT)

重イオン計測装置は、電子部品の誤動作や破損の原因の一つである重イオン(Li~Fe)の粒子別エネルギー分布を、シリコン半導体検出器で計測します。


シリコン半導体検出器は、荷電粒子がその検出器内で失ったエネルギーを電気信号に変換します。積層したシリコン半導体検出器の各層のロスエネルギー(ΔE)と各層のロスエネルギーの合計(E)からΔE×E法により入射粒子の質量を計測します。



ADEOS衛星搭載HITで観測された酸素イオンの世界マップ
ADEOS衛星搭載HITで観測された
酸素イオンの世界マップ
HITの計測原理(ΔE×E法)
HITの計測原理(ΔE×E法)


プラズマ計測装置(PLAM)

プラズマ計測装置は、宇宙機の帯電や放電の原因となる宇宙空間プラズマの密度と電子温度を、ラングミュアプローブ方式で計測します。

高エネルギー軽粒子モニタ(SDOM)

高エネルギー軽粒子モニタは、部品材料の劣化や、電子部品の誤動作の原因となる電子、陽子、α線等の高エネルギー軽粒子の粒子別エネルギー分布を、半導体検出器とシンチレータを組み合わせて計測します。

原子状酸素モニタ(AOM)

原子状酸素モニタは、国際宇宙ステーションが周回する軌道の原子状酸素の量を測定します。原子状酸素は熱制御材や塗装を劣化させ、国際宇宙ステーションの熱制御に悪い影響を及ぼします。

AOMはカーボンフィルムが原子状酸素の影響により薄くなるのを抵抗値として計測します。厚さの減り方は地上実験とフライトデータから分かっています。この校正データを用いて、原子状酸素の量を特定します。



原子状酸素モニタ(AOM)のセンサ部
原子状酸素モニタ(AOM)のセンサ部
ADEOS衛星搭載DOMで計測された陽子の世界マップ
ADEOS衛星搭載DOMで計測された陽子の世界マップ


電子部品評価装置(EDEE)

電子部品評価装置はJEMで使用される電子部品の放射線によるシングルイベント現象および劣化を計測します。

シングルイベント現象は、重イオン粒子や陽子が電子部品に入射することにより発生します。シングルイベント現象の発生は、電子部品の記憶データの反転や電流の急増等により検出します。

計測データを評価するための地上試験は、原子力研究所高崎研究所等で行います。

日本原子力研究開発機構



微小粒子捕獲実験装置/材料曝露実験装置(MPAC&SEED)
微小粒子捕獲実験装置/材料曝露実験装置(MPAC&SEED)概念図
微小粒子捕獲実験装置/材料曝露実験装置(MPAC&SEED)概念図

微小粒子捕獲実験装置は、宇宙ステーション軌道に存在する微小な粒子を捕獲する装置で、捕獲材料には、および金属板を用います。回収後、捕獲粒子の大きさ、組成、衝突エネルギ等を評価します。


材料曝露実験装置は宇宙用材料を搭載し、実宇宙環境に曝露させる装置です。回収後、宇宙用材料の放射線、原子状酸素等の宇宙環境による劣化状況を評価します。



JEMの概要

「きぼう」日本実験棟(JEM)は、与圧部、曝露部、補給部、マニピュレーターの4システム、および電力系、環境制御系などのサブシステムから構成されます。JEMは、スペースシャトルで段階的に打ち上げられ、軌道上で国際宇宙ステーションマニピュレーター、および搭乗員の船外活動作業により組立てられます。

宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター