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Ka帯高速伝送システムの研究

近年、地球観測衛星の高性能化に伴い、観測データが大容量化しています。観測データは衛星と地上局とを結ぶ通信回線によってユーザの元へと届けられます。特に、発災時における緊急観測によって得られた観測データは重要度が高く、短い時間で大容量のデータを送ることができる高速伝送システムが必要になります。

第一研究ユニットでは、衛星から地上局へデータを直接伝送する「直接伝送システム」の高速化のために、 Ka帯(26GHz帯)を利用した通信技術に関する研究開発を実施しています。



これまでの研究成果

これまでの成果としてX帯(8GHz帯の周波数)を使用した通信システムの高速化と小型軽量化を目指し、「高速マルチモード変調器(XMOD)」を開発しました。このXMODは2014年に打上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」に搭載され、伝送速度800 Mbps(2014年時点で地球観測衛星として世界最高レベル)を実現しました。


開発した高速マルチモード変調器(XMOD)外観
開発した高速マルチモード変調器(XMOD)外観
パドル展開中の「だいち2号」XMODにより送信された画像
パドル展開中の「だいち2号」XMODにより送信された画像


X帯の電波は降雨などの影響を受けにくい性質があることから信頼性が高い通信が可能ですが、それ故に、使用する衛星数が増加し電波干渉問題が顕在化しつつあります。また使用可能帯域幅の限界を迎えつつあることから、更なる高速化が可能であり、未だ地球観測衛星で実用化されていないKa帯(26GHz帯の周波数)を利用した直接伝送システムの研究開発を進めています。



研究課題

データ伝送速度の更なる高速化の要求に応えるために、Ka帯周波数( 使用可能な帯域幅がX帯の4倍)を使用した伝送システムを利用した伝送速度平均8Gbpsの実現を目指した研究開発を実施しています。



周波数利用効率の向上

これまでに使用してきた変調方式16 QAMで実現した周波数利用効率 4 [bit/s/Hz])を1.5倍の6 [bit/s/Hz])以上に高めることで、更なる高速化を実現します。DVB-S2X規格(*)を採用することで、世界中の多くの衛星オペレータで運用可能な通信システムを目指します。

*DVB (Digital Video Broadcasting ) -S2X:欧州電気通信標準化機構(ETSI)が定める通信標準規格



降雨対策
  • Ka帯周波数は降雨による影響で信号の減衰が非常に大きいため、通信品質を維持したまま通信速度の高速化を実現するには、信号強度の向上が必須となります。
    電力増幅器を最大出力電力付近で動作させることができれば、増幅器の寸法や消費電力を抑えたまま高速化が実現できます。増幅器の入出力特性の非線形特性を事前に補償するディジタル・プレディストーション(DPD)技術を適用することで、電力増幅器を最大出力電力付近で動作させ、消費電力を低減します。





  • 運用地上局との組合せにより降雨の影響を軽減する方策として、衛星から複数の地上局へ同時にデータ伝送し降雨条件の良い地上局のデータを採用するサイトアレイや、降雨条件の良い局に切り替えて伝送するサイトダイバーシチ等の採用を検討しています。


コンパクトな伝送システム

小型な衛星通信システムでも高速な通信システムを採用できるように、コンパクトな伝送システムとなるような仕組みを検討しています。

  • 高効率誤り訂正符号の採用
    通信経路上で受ける影響によって生じるビット誤りを訂正する誤り訂正符号を、従来使用してきたReed-Solomon符号等よりも誤り訂正能力の高いLDPC(Low Density Parity Check)符号を採用することで、受信に必要となる電力を下げることを検討しています。
  • 回線状況に応じた通信速度制御技術の採用
    事前に決められた仰角等で通信速度の切替を行う可変符号化変調(VCM)方式や、降雨等の電波環境の条件に対して適応的に通信速度の切替を行う適応符号化変調(ACM)方式、再送制御等の地上システムとの連携が必要な通信速度制御技術の導入により、より効率的な通信システムを実現します。


ACM方式の運用イメージ(変調方式、伝送速度は一例)
ACM方式の運用イメージ(変調方式、伝送速度は一例)


発表論文等

  • Kazuya Inaoka, Masashi Shirakura, Yoshiyuki Tashima, Tomohiro Araki and Masaaki Shimada,“Study on an Ultra High Speed Transmission System for Earth Observation Satellites”, The 18th Ka and Broadband Communications, Canada, 2012.
  • 田島成将, 稲岡和也, 荒木智宏, 島田政明, 谷島正信, “地球観測衛星用Ka帯高速伝送システムの検討 ? LDPC符号、VCM/ACMの検討”, 電子情報通信学会技術研究報告, SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス Vol.113 No.88, 11-16, 2013.
  • Masanobu Yajima, Mitsuhiro Nakadai, Yoshiyuki Tashima, Nobuhiko Ando, Shigenori Tani and Akinori Fujimura,“Performance Evaluation of Ka-band Satellite Communication Subsystems Using Digital Pre-Distorter”, The 7th ESA International Workshop on Tracking, Telemetry and Command Systems for Space Applications(TTC 2016) , Netherlands, 2016.
  • Masanobu Yajima, Mitsuhiro Nakadai, Yoshiyuki Tashima,“Experimental Evaluation of Non-linear Distortion Compensation Using the WINDS Satellite”, The 31st International Symposium on Space Technology and Science (31st ISTS), Ehime, 2017.
  • Chihaya Kato, Mitsuhiro Nakadai and Masanobu Yajima,“Performance Evaluation of ka-band Telecommunication Subsystems for Earth Observation Satellites”, The 23rd Ka and Broadband Communications, Italy, 2017.