研究紹介

中性大気密度の研究

HTV、SLATS衛星など近年のJAXAプロジェクトでは空気抵抗の影響が大きい低高度での運用が求められており、飛翔体に抗力の推定が必要である高度についての大気密度モデルの高精度な予測データ及び実際の結果に対する定性的な大気変動の評価結果の需要が高まってきています。また、飛翔体の運用のみならず、デブリの軌道予測においても大気密度モデルの必要性が高まってきています。本研究では軌道決定に影響を与える中性大気密度予測誤差を軽減するために国内で開発されている数値モデルであるGAIAモデル(共同研究:成蹊大学、九州大学)を軸に大気密度モデルの研究を行っています。また、モデルを改良する為に必要な中性大気密度を計測するための計測装置(共同研究:東京大学)の開発も実施しています。



研究の概要

中性大気密度モデル(GAIAモデル)の検証・開発

★本研究は成蹊大学、九州大学との共同研究


一般的に中性大気密度推定として大気密度モデル(経験モデル)が利用されています。経験モデルは数値モデルと異なり、インプットパラメータからアウトプット結果までの物理現象を式で追えず、また公開版モデルにおいてはソースコードのロジックが公開されていないため、精度向上の方法としてモデル計算結果に対して合わせ込むような補正項(定数項)を加えることでしか対応できません。


軌道を改善するため、飛翔体運用に応用できるようGAIAモデル(数値モデル)を実測値と比較検証を実施し、決定に大きな影響を与える大気密度の誤差を軽減できるよう検討を実施しています。
また実測との比較においてはHTV3号機に搭載されたi-ballの軌道予測で実施し、よい結果を得ました。
この研究により今後安全確保領域の縮小が今後期待されます。


CHAMP衛星とGAIAモデルとの比較結果
CHAMP衛星とGAIAモデルとの比較結果


中性大気密度計測装置の開発

★本研究は東京大学との共同研究



セットアップ写真(2自由度)

モデルと実測値との比較検証において高度200km以下での計測データの不足が現在問題です。また、高度200kmにおける抗力に耐え、高度400km以下において必要な高精度で計測できる加速度計は存在していません。本研究では、東京大学が研究・開発してきた地震計の技術を応用し、高感度の加速度計の実現に向けて研究・開発を行っています。


また、小型軽量化を図るためマスを中心に6自由度の構造を基本とし、FY26は2自由度までの制御ができ、最大加速度1×10-2(m/s2)が実現で出来ることを確認しました。



中性大気密度計測装置 目標スペック

項目 目標スペック
計測高度 120km~400km
自由度 6自由度
分解能 1×10-8(m/s2
最大加速度 1×10-2(m/s2
サイズ
※エレキ部含む
10cm×10cm×20cm
重量 5kg以下